スタッドレスタイヤが雨の日に滑りやすい理由と安全のポイント
冬場の雪道や凍結路面で性能を発揮するスタッドレスタイヤですが、雨の日には夏タイヤよりも制動距離が長くなったり、ハイドロプレーニング現象が起こりやすくなったりするリスクがあります。
この記事では、スタッドレスタイヤが雨の日に滑りやすい理由や、 安全運転のポイントなどについて、詳しく解説します。雨の日の運転に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
スタッドレスタイヤが雨の日に滑りやすい理由
スタッドレスタイヤが雨の日に滑りやすいのは、ノーマルタイヤ(夏タイヤ)よりも柔らかいゴムを採用しているためです。
スタッドレスタイヤは、氷雪路での走行性能を重視して設計されています。凍った路面は、一見平らに見えても、実際には細かな凹凸があり、安定した走行のためにはその凸凹をしっかりと掴まなくてはなりません。スタッドレスタイヤは、柔らかいゴムを採用することで凸凹に密着し、凍った路面でもグリップ性能を発揮できるのです。しかし、この柔らかさには弱点もあります。
雨で濡れた路面では、タイヤと路面の間に水膜が生じます。タイヤが路面に密着するためには、この水膜をかき分ける「剪断力(せんだんりょく)」が必要です。しかしスタッドレスタイヤの柔らかいゴムは、この力が弱く、路面との間に水が多く残ってしまいます。
また、雨天時の路面にタイヤを接地させるには、かき分けた水を外にかき出す力も重要です。ところが、かき分け不足によってタイヤと路面の間に水が多く残ってしまうため、排水処理が追いつかなくなることがあります。
結果としてタイヤと路面の間に水膜が残り、接地が不十分となって滑りやすくなるのです。
スタッドレスタイヤで雨天時を走行したときに起こりやすい現象
雨の日にスタッドレスタイヤで走行する際には、次の2つの現象に注意が必要です。
- ハイドロプレーニング現象
- 制動距離の増大
これらの現象は夏タイヤでも発生しますが、スタッドレスタイヤの特性により、さらに起こりやすくなる傾向があります。
ハイドロプレーニング現象
ハイドロプレーニング現象とは、タイヤが水膜によって浮いてしまう現象です。タイヤが路面から浮く状態になり、ハンドルやブレーキが効かなくなります。
この現象は、スタッドレスタイヤに限らず、雨の日の高速走行時に発生しやすい現象として知られています。

しかし、前述のとおりスタッドレスタイヤは冬道での性能を優先したトレッドパタンを持つため、夏タイヤと比較してウェット路面での排水性能が劣る傾向にあります。そのため、タイヤと路面の間の水を排出しきれず、ハイドロプレーニング現象が発生するリスクが高まります。
制動距離の増大
制動距離とは、ブレーキが効き始めてから実際に車が停止するまでの距離です。

これまで解説したように、スタッドレスタイヤは雨天時にグリップ力が落ちるため、制動距離が長くなる傾向にあります。
雨天時のスタッドレスタイヤでの走行について知っておきたいこと
雨天時にスタッドレスタイヤで安全に走行するためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。特に気をつけたいのが以下の4点です。
- 高速道路の走行は特に注意
- 溝が浅くなったタイヤはさらに滑りやすくなる
- 夏場の使用はさらに制動距離が長くなる
- 早めのブレーキが安全運転につながる
それぞれ見ていきましょう。
高速道路の走行は特に注意
雨天時の高速道路は、ハイドロプレーニング現象が起きやすい環境です。
以下はスタッドレスタイヤではなく夏タイヤのテストですが、グリップ性能の高い新品の夏タイヤであっても、速度が上がるにつれてタイヤが浮いていることがわかります。

また、制動距離も速度が上がるにつれて伸びる傾向にあります。
スピードを出し過ぎない、十分な車間距離を保つ、昼間でもヘッドライトを点灯して良好な視界を確保する、周囲の安全確認を丁寧に行うなどの対策を徹底しましょう。
溝が浅くなったタイヤはさらに滑りやすくなる
タイヤの溝が浅くなると排水性能が低下し、滑りやすくなります。新品タイヤであっても起こりうるハイドロプレーニング現象ですが、溝が浅くなると、より遅い速度でも発生することが確認されています。
また、制動距離についても、溝が浅いほど伸びる傾向です。JAFが実施したテストでも、濡れた路面におけるスタッドレスタイヤの制動距離は、どの溝深さの夏タイヤよりも制動距離が長いという結果になっています。
<ウェット路面:制動距離の平均値>
タイヤの溝 | 時速60km(m) | 時速100km(m) | ||
---|---|---|---|---|
直線 | 旋回 | 直線 | 旋回 | |
夏タイヤ (10分山) |
16.7 | 47.6 | 19.4 | ‐ |
夏タイヤ (5分山) |
16.7 | 50.8 | 19.5 | ‐ |
夏タイヤ (2分山) |
18.0 | 70.5 | 20.6 | ‐ |
スタッドレスタイヤ (新品時から50%摩耗したことを 示すプラットホーム出現) |
20.3 | 72.2 | 26.7 | ‐ |
※出典元:摩耗タイヤの検証(JAFユーザーテスト)
夏場の使用はさらに制動距離が長くなる
スタッドレスタイヤは、雪が積もった路面や凍った路面での性能を重視して設計されたタイヤですが、乾いた路面や濡れた路面の走行も可能です。
しかし、スタッドレスタイヤは柔らかいゴムを採用しているため、路面温度の高い時期に使用するとより柔らかくなり、路面との摩擦が起きにくくなります。この結果、制動距離がさらに長くなる可能性が生じます。
そのため、それぞれの用途に合わせ、夏には夏タイヤ、冬にはスタッドレスタイヤへ交換することをおすすめします。

スタッドレスタイヤは夏に使うのはNG?理由やよくある質問を紹介
安全性と費用の観点から、スタッドレスタイヤを夏に使用することは推奨されていません。
早めのブレーキが安全運転につながる
濡れた路面は制動距離が伸びるため、早めのブレーキ操作を意識し、余裕を持った減速を心がけることが安全運転につながります。また、前のクルマとの車間距離を十分にとることも、余裕を持ったブレーキ操作を行ううえで不可欠です。
まとめ
スタッドレスタイヤが雨の日に滑りやすいのは、冬道での走行性能を重視して柔らかいゴムが採用されていることが主な理由です。柔らかいゴムは凍結した路面では高いグリップ力を発揮しますが、濡れた路面では排水が追いつかず、滑りやすい状態になります。
雨の日の高速走行や、溝が浅くなったタイヤ、夏場の使用はさらに滑りやすくなる傾向があるため、特に注意しましょう。
安全なドライブには、慎重な運転と、路面環境に応じたタイヤの装着が大切です。スピードを控えめにし、十分な車間距離を保ち、早めのブレーキ操作を心がければ、雨天時のリスクを減らせます。また、濡れた路面に強いスタッドレスタイヤを選ぶのも対策の一つです。
ブリヂストンの新モデル「BLIZZAK WZ-1」は、ウェットでの安定したグリップに寄与するシリカを高比率で配合することで、同シリーズの「VRX3」よりもウェット性能を向上させました。

ブリヂストンは4つのタイプの店舗を全国に展開し、
良質な製品とサービスをお届けしています。
