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Behind the Race それぞれの24時間
2026.06.24
今年も富士スピードウェイで、スーパー耐久シリーズのハイライトのひとつである「富士24時間レース」が開催された。24時間という長いレースの中では、コース上でマシンが走り続ける一方、その裏側でもさまざまな仕事が続いている。
昼と夜で大きく変化する路面温度。突然の天候変化。そして24時間という長いレース距離。ドライバーやチームだけでなく、タイヤサービスやイベント運営など、多くの人たちがそれぞれの持ち場でレースと向き合っている。
富士24時間レースの舞台裏には、さまざまな現場があった。
深夜も稼働を続けるタイヤガレージ。コース外でも24時間レースは続いている。
約7000本を支える現場
国内唯一の24時間耐久レースとして開催される富士24時間レース。参戦車両はクラスも車種も多岐にわたり、使用するタイヤサイズもさまざまだ。ブリヂストンでは今回のレースに向けて約7000本のタイヤを準備。輸送や在庫管理、組み替え作業など、レースが始まる前から多くの準備が進められていた。
ブリヂストン タイヤガレージを担当する砂田氏は、その舞台裏についてこう語る。
「サイズもさまざまなので、本数を確実に管理しながらトレーラーへ積み込んでいきます。傷がつかないように養生もしながら、何度もチェックを重ねています」
24時間レースでは、昼夜を問わずタイヤサービスが続く。チームごとに異なるサイズや仕様を確認し、組み替えを行い、必要なタイヤを供給する。タイヤガレージでは、次の依頼に備えながら準備が進められている。天候やレース展開によって求められる対応が変わるのも、24時間レースならではだ。
「7000本、1本1本を確実に管理しています。最後まで安心して走ってもらえるように頑張ります」
約7000本のタイヤを管理するチームの一員として現場を支える砂田さん。レースを支える舞台裏のキーパーソンのひとりだ。
レースが続く限り、タイヤサービスも止まらない。次の走行に向けた準備が続けられる。
約7000本のタイヤが持ち込まれた富士24時間レース。タイヤガレージでは24時間体制で準備が続く。
監督兼ドライバーとしてチームを率いる佐々木雅弘選手。車両開発にも長く携わってきた。
耐久レースで求められること
スーパー耐久は、その名の通り「耐久」が問われるレース。
一瞬の速さだけではなく、長時間にわたって安定したパフォーマンスを維持することが求められる。そうした耐久レースの難しさを語るのは、今シーズンから監督兼ドライバーとして参戦する佐々木雅弘選手だ。
佐々木選手は、ROOKIE RacingでST-Qクラスの開発車両に長く携わり、液体水素エンジン車両の開発にも関わってきた。車両だけでなくタイヤ開発にも携わるなど、その視点は車両全体に及ぶ。レースの現場と開発の現場、その両方を知る存在だからこそ、耐久レースにおけるタイヤの役割をこう語る。
耐久レースでは、一発のタイムを出すというよりも、ロングディスタンスで安定して走り続けることが重要です。富士24時間では昼夜で路面温度が大きく変わり、天候も変化します。その中でドライバーが安心して走り続けられることが求められます。
佐々木 雅弘
佐々木選手が監督兼ドライバーを務める28号車は、レースを戦うだけでなく新たな技術開発の場としても活用されている。車両、タイヤ、ホイールなどさまざまな領域の開発に関わってきた経験が、今回の言葉にも表れていた。
ミッドシップ4WDレイアウトを採用する28号車。レースという過酷な環境を活用しながら、車両やタイヤなど新たな技術の検証が続けられている。
スーパー耐久は新しい技術を鍛え上げる場でもある。液体水素エンジン車両もそのひとつだ。
変化するコンディションの中で24時間を戦う。耐久レースでは安定したパフォーマンスが求められる。
経験が語るタイヤ性能
24時間の間には昼夜で路面温度が変わり、天候も変化する。その中で安定して走り続けることが、耐久レースでは欠かせない要素になる。そう語るのは蒲生尚弥選手。
SUPER GT GT300クラスでチャンピオンを獲得し、スーパー耐久でもシリーズタイトルを経験。さらにニュルブルクリンク24時間レースへの参戦経験も持つなど、国内外のさまざまな舞台で実績を重ねてきたドライバー。年間を通じてさまざまなコンディションでマシンを走らせる蒲生選手は、タイヤに求められる要素についてこう話す。
寒い時期から暑い時期まで、年間を通して安定したパフォーマンスを発揮してくれます。さまざまな車種が参戦していますが、多くのドライバーが同じような印象を持っていると思います。
蒲生 尚弥
国内外のさまざまなカテゴリーで経験を積んできた蒲生尚弥選手。
富士山を背に走るマシン。変わらない景色の中で、毎年新しいドラマが生まれている。
タイヤ供給や組み替え、管理など、それぞれの持ち場でレースを支えるスタッフたち。
GTマシンから市販車ベースの車両まで、多彩な車種が参戦しているスーパー耐久。車両もタイヤサイズも異なる中で同じレースを戦う。その環境の中で、蒲生選手が挙げたのも安定した性能の重要性だった。
ST-Qクラスで開発車両をドライブする井口卓人選手。走行と開発、その両面からレースに向き合う。
開発の現場から見えるもの
ST-Qクラスに参戦する井口卓人選手の印象的な言葉があった。
スーパー耐久のST-Qクラスは、新しい技術や燃料、車両の可能性を探るための開発カテゴリーだ。
井口選手がドライブするSUBARU HIGH PERFORMANCE X Future Conceptも、将来技術の実証を目的とした開発車両のひとつ。そこで求められるのは速さだけではない。走行中の変化を正確に感じ取り、開発へフィードバックする役割も担っている。
タイヤのグリップ状態が安定していることは、開発する上で非常に重要です。最後までグリップがあることで、クルマの感覚をしっかり感じ取りながら走ることができます。その積み重ねが次の開発につながります。
井口 卓人
井口選手の言葉から伝わってきたのは、開発において求められるのが単なるグリップ性能ではないということだ。ドライバーがクルマの変化を正確に感じ取り、エンジニアへ伝えるためには、最後まで安定した性能を維持することが欠かせない。
開発車両が集まるST-Qクラスでは、新しい燃料や技術、素材の可能性が日々試されている。そうした取り組みの土台となっているのも、安定した性能を発揮するタイヤだった。
将来技術の可能性を探るST-Qクラスの開発車両。レースという環境で実証が続けられている。
レースで鍛え、レースで学ぶ。スーパー耐久ならではの取り組みを表す「共挑」のキーワード。
レースと開発。その両方を支える役割が、耐久レースのタイヤには求められている。
ステージでは、再生資源を活用したタイヤについての話題も紹介された。
24時間のその先へ
レースウイーク中、イベント広場ではブリヂストンブースが展開され、メインステージではドライバーを招いたトークショーなども行われた。レース観戦の合間に展示を見て回ったり、食事を楽しんだり。キャンプやバーベキューをしながら過ごす人の姿もあり、24時間という長い時間ならではのゆったりとした空気がサーキットを包んでいた。
ステージでは、再生資源を活用したタイヤの話題も。トークショーに登壇した坪井翔選手は、実際にそのタイヤを装着した車両で走行した経験を振り返りながら、「言われるまで再生資源を活用したタイヤだと気付かなかった」と笑顔を見せる。
24時間レースという過酷な戦いの裏側で、新しい技術やアイデアが試されている。その一方で、サーキットにはどこか肩の力が抜けた時間も流れている。本気のレースと、ゆったりとした週末の時間。その両方が自然に同居しているのも、富士24時間レースらしい風景だ。
レースだけでなく、来場者がモータースポーツに触れる機会も富士24時間レースの魅力のひとつ。
「速く走る」だけではない。24時間を戦うためのドライビングについて語る平峰選手と松田選手。
イベント広場に展開されたブリヂストンブース。タイヤやホイールの展示が行われた。
レース終盤、富士スピードウェイには雨が降り始めた。
レインタイヤがピットロードに運ばれる。
24時間を戦ってきたチームに迫られる最後の判断。揺さぶられるレースの行方。
優勝を争うチーム、完走を目指すチーム、新しい技術に取り組む車両、ゴールを祈るスタッフ、そして思い思いの時間を過ごす人たち。
ポディウムが歓喜に包まれる一方で、それぞれの24時間もまた、静かに終わろうとしていた。
ナイトセッションに行われる花火は24時間レース恒例プログラム。ヘアピンコーナーはスマホを向ける人で溢れていた。