タイヤの溝深さは何mmまで大丈夫?使用限度の目安はスリップサイン
タイヤの溝深さによる使用限度は、夏タイヤと冬タイヤで違います。この記事では、スリップサインの見方や測定方法、タイヤの溝が浅くなるリスクまで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

タイヤの交換時期を見極めるサインの一つが、溝の深さです。タイヤの溝は、「タイヤの排水性能」「タイヤの駆動力・制動力の確保」「クルマの操縦安定性・放熱性の向上」といった重要な役割を担っています。

タイヤの溝が浅くなると、ハンドルやブレーキが効かなくなり、走行に危険が及ぶ恐れがあります。快適なカーライフには、定期的な日常点検により、溝深さをチェックすることが欠かせません。

この記事では、溝深さから判断するタイヤの交換時期や、溝が浅くなった場合のリスク、タイヤを早くすり減らしてしまう使い方、管理の仕方を解説します。タイヤの溝深さが気になっていて、交換を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

タイヤの溝の深さは何mmまで大丈夫?

タイヤの安全性能を維持するためには、適切な溝深さが必要です。法的な基準と、実際の安全性を考慮した基準には違いがあり、種類によっても異なる点に注意しなければなりません。また、夏タイヤと冬タイヤでは、交換時期を判断する方法が異なります。

法定限度は1.6mmまで|目安はスリップサイン

タイヤの溝の深さは、「道路運送車両の保安基準」により1.6mm以上と定められています。

残り溝1.6mmを示す目安が、スリップサインの露出です。1箇所でもスリップサインが出たタイヤは、装着・走行してはいけないと法律で定められています。

1ヵ所でも溝が途切れるスリップサインが出ると危険です。 この三角マークがスリップサイン表示マークです。

※実際の商品でのスリップサインの位置は三角マークの延長線上の位置から多少ずれる場合があります。

安全上の限界は4mmまで

タイヤの残り溝が1.6mm以上必要であるという基準は、あくまで法律で定められた使用限度です。安全上の観点では、夏タイヤは4mm以下になったら交換をおすすめします。

残り溝が浅くなった場合の影響について詳しくは後述します。

制動距離

冬タイヤは溝深さ50%まで

冬タイヤ(スタッドレスタイヤ)も、残り溝の法定限度は1.6mmです。しかし、冬タイヤとして安全に使用できる限界は、それよりも早く訪れます。

具体的には、溝深さが50%以下になると、冬タイヤとして使うことができません。これは、氷雪路で滑らず安全に走行できるように細かく入っている切れ込み(サイプ)が、摩耗により浅くなることで、滑りやすくなってしまうためです。

冬タイヤの溝深さが50%になったことを知らせるサインとして、プラットホームがあります。プラットホームは、タイヤサイド部の4ヶ所に表示された矢印が示す、トレッド(接地)面の溝内にあります。

安全な走行のためにも、プラットホームが露出していないか、定期的に点検してください。

プラットホーム

タイヤの残り溝を測る方法

タイヤの正確な残り溝を確認する際は、タイヤ専門店などで点検を依頼しましょう。

ただし、車の所有者自身が、日常的な点検を行うことも大切です。その簡易的な方法として、硬貨を使った方法があります。

■夏タイヤの場合

交換時期の目安

夏タイヤは、5円玉を使って残り溝を測ることができます。

5円玉をタイヤの溝に垂直に差し込んで「五」の文字の三画目の横線が見えたら、残り溝が4mmになっている目安です。さらに、「五」の文字がすべて見えたら残り溝は約1.6mmです。

■冬タイヤの場合

交換時期の目安

冬タイヤの場合、100円玉を使って残り溝を測ることができます。

100円玉を溝に差し込んで「1」の字が見えたら、残り溝が半分以下になっている目安です。交換の時期と考えてよいでしょう。

※タイヤサイズによって、溝の深さは多少異なります。

硬貨を使った溝の測り方は、以下の記事で詳しく解説しています。

ご自身で残り溝をチェックすることに不安を感じる場合は、ブリヂストンのタイヤ点検の活用を、ぜひご検討ください。

タイヤの溝が浅くなるとどうなる?

溝が浅くなったタイヤを使用し続けると、以下のようなリスクを招きます。

  • 整備不良で道路交通法違反となる
  • ハイドロプレーニング現象が発生しやすくなる

それぞれ見ていきましょう。

整備不良で道路交通法違反となる

タイヤの残り溝が1.6mmになると現れるスリップサインが1箇所でも出たら、そのタイヤは使用してはいけないと、法律で定められています。

スリップサインが出たタイヤを使用した場合、整備不良車両として違反点数と罰金が科されます。もちろん車検にも通りません。

※出典元:タイヤのおはなし|一般社団法人 日本自動車タイヤ協会
https://www.jatma.or.jp/docs/publications/tyre-no-ohanashi_pc.pdf

※出典元:交通違反の点数一覧表|警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/torishimari/gyosei/seido/tensu.html

※出典元:反則行為の種別及び反則金一覧表|警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/torishimari/tetsuzuki/hansoku.html

ハイドロプレーニング現象が発生しやすくなる

ハイドロプレーニング現象とは、雨の日などに濡れた道路を走った際、タイヤが水膜によって浮いてしまう現象のことです。タイヤの溝が浅くなり、タイヤと路面の間の水をかき出す力(排水性能)が低くなることで発生します。

この現象が発生すると、制動距離(ブレーキが効き始めてからクルマが停止するまでの距離)が増大し、ハンドルやブレーキが効かなくなってしまうため、大変危険です。

新品タイヤでも速度をあげていくと発生しますが、溝が浅くなるとより低い速度からその現象が発生することが、試験によって確認されています。走行前にタイヤの残り溝をチェックしましょう。

■タイヤの残り溝が浅くなると、4mmを起点に制動距離が伸びていることが分かります。

タイヤの溝深さと制動距離の関係

■タイヤの残り溝が2.5mm・5.0mmになると、7.7mmの場合よりも早い速度80km/hの段階で浮いてしまっています。

ハイドロプレーニング現象

溝のすり減り方はタイヤの「使い方」と「管理の仕方」で変わる

タイヤの溝の摩耗速度は、日常の運転方法や保管方法に大きく左右されます。適切な管理と運転の心がけにより、タイヤの寿命を延ばし、性能を長期間維持することが可能です。

ここでは、タイヤの溝を長持ちさせるためのポイントを詳しく解説していきます。

空気圧の過不足は溝の摩耗を早める

タイヤの空気圧に過不足があると、摩耗や損傷の原因になります。これらを防ぐには、常に適切な空気圧を保つことが重要です。

空気圧が不足すると、走行中にタイヤが大きく変形し、地面に強く押しつけられることで、ショルダー部(タイヤの端)が摩耗しやすくなります。反対に、空気圧が高すぎると、センター(真ん中)部分が集中的に摩耗してしまいます。

走行していなくても空気圧は徐々に減っていくため、最低でも1ヶ月に1回は空気圧を点検しましょう。

適正空気圧の確認方法や点検頻度など、タイヤの空気圧について詳しくは以下の記事をご覧ください。

長期間にわたる同じ位置への装着は偏摩耗を招く

タイヤは、装着位置によって摩耗の仕方に差が出るため、長期間にわたって同じ位置にタイヤを装着すると、偏摩耗を招きます。

偏摩耗とは、タイヤのトレッド部(路面との接地面)が部分的に異常に摩耗する現象のことです。偏摩耗は、振動や騒音、タイヤ寿命の短命化、タイヤ性能の悪化の原因につながります。

対策としては、定期的にタイヤの装着位置を交換することが挙げられます。

タイヤの装着位置を交換

偏摩耗やタイヤの装着位置の交換について詳しくは以下の記事をご覧ください。

急ブレーキ・急ハンドル・据え切りは溝が減りやすい

急ブレーキ・急ハンドル、ハンドルの据え切り(クルマが止まった状態でハンドルを回すこと)は、タイヤの溝を早くすり減らす原因になります。

余裕を持った運転やハンドル操作を心がけ、タイヤの寿命を延ばしましょう。

安全・安心なカーライフのために定期的に溝深さをチェック

タイヤは、クルマのなかで唯一路面と接している保安部品です。そして、わずか手のひら1枚分の接地面積で、「荷重を支える」「走る」「曲がる」「止まる」という、車の基本性能を担っています。

この性能を支えている要素の一つが、タイヤの溝です。溝があることで、路面の水を除去し、路面をしっかりと掴めます。こうした安全性能を維持するためにも、タイヤの残り溝は定期的に点検し、必要に応じて交換を検討しましょう。

なお、タイヤの交換のサインは溝深さだけではありません。以下の記事を参考に、溝深さとともに点検を行いましょう。

まとめ

タイヤの残り溝は1.6mmが法定限度ですが、夏タイヤの場合は4mm、冬タイヤの場合は50%程度残っていることが推奨されています。残り溝1.6mmのタイヤの使用は、整備不良として道路交通法違反となり、車検にも通らないため注意しましょう。

また、溝が浅くなると、ハイドロプレーニング現象が起こりやすくなります。ハイドロプレーニング現象が発生すると、制動距離が増大したり、ハンドル操作・ブレーキ操作が効かなくなったりするため、それを起因とする事故を招きかねません。

適正な空気圧の維持、定期的な装着位置の交換、急な操作を避けた安全運転により、タイヤの溝の減りを抑制できます。定期的な点検で残り溝をチェックすることで、事故を未然に防ぎましょう。正確なチェックはタイヤ専門店などで受けられますが、硬貨を用いれば、自身でも簡易的な検査が可能です。

残り溝が交換時期に達している方は、ブリヂストンのオンラインストアの活用がおすすめです。車種やタイヤサイズ、ブランドに応じた最適なタイヤを簡単に見つけることができます。自身で溝の点検を行うことに不安がある方は、ブリヂストンの点検をご利用ください。

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