タイヤの寿命は、夏タイヤと冬用のスタッドレスタイヤとで異なります。
また、タイヤの使用状態によっても前後するため、日常点検で常に状態を確認しておく必要があります。
安全にクルマを運転するために、タイヤの交換時期と見分け方のポイントを見ていきましょう。
夏タイヤの寿命と交換時期
夏タイヤがすり減り、残っている溝の深さが1.6mmになると、スリップサインと呼ばれるマークが出てきます。1箇所でもスリップサインが出たタイヤは、道路交通法で装着・使用が禁止されています。
※実際の商品でのスリップサインの位置は三角マークの延長線上の位置から多少ずれる場合があります。
なお、スリップサインが出ているタイヤを装着すると整備不良車両になり、制動装置等の整備不良として交通違反で2点の加点と6,000円〜12,000円の反則金が科せられるので注意しましょう。
しかし、スリップサインが出ていなくてもタイヤを交換すべき場合があります。その理由について詳しく解説していきます
残り溝4mm以下が夏タイヤの寿命
タイヤが路面と直接接する部分であるトレッド部にある溝や切れ込みは、総称して“トレッドパタン”と呼ばれ、主に3つの性能があります。
- タイヤと路面の間から水を除去する
- タイヤの駆動力、制動力の確保
- クルマの操縦安定性、タイヤの放熱性の向上
トレッド部分の溝が浅くなると、上記の性能が低下します。特に、雨の日の高速走行時には排水性能が低下して、溝を通して十分に水を吐き出すことができず、タイヤが路面を滑りブレーキやハンドルがきかなくなるハイドロプレーニング現象が発生しやすくなります。
そのため、制動距離が急激に大きくなる残り溝4mmが、夏タイヤを安全に使用できる寿命の限界といえます。
タイヤの残り溝と制動距離の関係は、下記のページのグラフを参照ください。
溝が残っていても使用開始後5年以上経過で交換を
タイヤはゴム製品です。そのため、ゴムの特性が経時劣化するのに伴い、タイヤの特性も変化します。時間が経つにしたがってタイヤのゴムからは油が揮発し、次第に柔軟性が失われてしまうのです。
地面と接している部分がしっかりと路面をつかめなくなると、ブレーキやハンドリングに影響が出てしまいます。
使用開始後5年以上経過したタイヤは、継続して使用できるかタイヤ販売店等で点検を受けましょう。また、外観上では溝がしっかりと残っていても、製造後10年経過したタイヤはゴムの経時劣化が進んでおり、安全面での性能が保証されないため、新しいものに交換することをおすすめします。
スタッドレスタイヤの寿命と交換時期
スタッドレスタイヤも夏タイヤと同じく、残り溝の深さ1.6mmまでが法律で定められた寿命です。しかし、スタッドレスタイヤとして使用できる寿命の限界は、もっと早く訪れます。その理由は、氷雪路でのグリップ性能にあります。
新品時から50%の摩耗がスタッドレス性能の寿命
スタッドレスタイヤは新品時から50%摩耗すると、氷雪路でのグリップ性能が大きく低下してしまいます。
スタッドレスタイヤのトレッドパタンには、路面で雪が溶けた水を除去し、しっかりと雪や氷に覆われた路面をグリップするために、夏タイヤよりも細かな切れ込み(サイプ)が入っています。
トレッドパタンが摩耗すると切れ込みも浅くなります。これによって除水効果やグリップ力も下がってしまうのです。そこで、ブリヂストンでは50%の摩耗を目安にスタッドレスタイヤの交換をおすすめしています。
タイミングはプラットホームでチェック
スタッドレスタイヤには、夏タイヤと同様の残り溝1.6mmを知らせるスリップサインの他に、50%摩耗の目安を知らせるプラットホームと呼ばれる突起があります。
ブロックの間にギザギザが刻まれた突起が配置されているので、この突起の高さがブロックに近づいたら、タイヤ交換の目安としてください。
100円玉ですぐわかるスタッドレスタイヤBLIZZAKの交換時期
ブリヂストンのスタッドレスタイヤBLIZZAKの交換時期が気になる方に、プラットホーム以外で残り溝をチェックする方法をご紹介します。100円玉を用意して、「100」の文字がタイヤに直角になるように溝に差し込みます。この時に「1」が見えたら残り溝は約5mmですので、そろそろタイヤ交換の時期と考えてよいでしょう。
タイヤの寿命と交換時期のチェックポイント、見分け方
タイヤの寿命の長さは、残り溝の深さ以外に、扁平率や直径、用途、種類や摩耗の状態、クルマの乗り方によっても変わってきます。
残り溝は50%程度が交換の目安
残り溝50%程度がタイヤの性能を発揮できる寿命であり、交換時期の目安になります。4mmは、あくまで平均です。
タイヤの種類や扁平率によって多少異なるため、4mmにこだわらずトレッド部分が50%ほど摩耗したら交換を検討しましょう。
ひび割れや偏った摩耗は交換必須
溝がしっかりと残っていても、トレッド部にひび割れがあったり、偏った摩耗が見られたりする場合は、安全面から速やかなタイヤの交換が必要です。偏摩耗はタイヤが地面と接する面積が減り、ブレーキ性能などを正しく発揮できなくなってしまいます。
また、ひび割れはタイヤのゴムが劣化したり内部のワイヤーが切れていたりする可能性があるので、バースト事故などの原因ともなります。
上図のようにひび割れがタイヤ内部のコードに達しない限り、安全上の問題は無く、
継続使用は可能ですが、ひび割れがタイヤ内部のコードに達している場合は、交換が必要です。
タイヤの寿命と交換時期を延ばす方法
タイヤの寿命や交換時期を延ばすために意識したい5つのポイントを見ていきましょう。
1.乗車前の日常点検がなによりも大切
乗車前には必ずタイヤを確認し、傷がないか、空気圧や残り溝が不足していないかを点検しましょう。異物(釘・石など)を踏んでできた傷やパンクは、その多くを日常点検で発見できます。日常点検によって異常をいち早く見つけ、偏摩耗になる前に整備や位置交換を行うことで、タイヤ寿命が延びます。
2.月に一度の空気圧点検で適正な空気圧の維持を
空気圧管理はタイヤ寿命にとって大切なポイントです。空気圧が不足していると、タイヤは走行中に大きく変形し、地面に押し付けられることで摩耗しやすくなって、タイヤ寿命が縮んでしまいます。適切な空気圧によってこそ安全に運転でき、タイヤ寿命を保てるのです。
3.タイヤの位置交換とアライメントで摩耗を均一に
装着位置によって摩耗に差が出るため、定期的にタイヤの装着位置を交換(ローテーション)しましょう。また、アライメント(タイヤの取り付け角度のズレとバランスの修正)を行うことで、タイヤの摩耗が均一になります
4.保管方法を注意することで劣化を防ぐ
タイヤはゴム製品なので、直射日光や雨が当たる場所に置いておくと劣化してしまいます。 涼しく暗い場所で専用のタイヤカバーを掛けて保管しましょう。また、油類や熱源のそばで保管すると、変質や発火の原因となり危険です。
また、タイヤとホイールをセットで保管する場合は、タイヤを横にして置くことで設置部の変形や劣化を抑えられます。
スペースなどの問題で自宅での保管が難しい時は、タイヤ販売店等に預かってもらうこともできるので相談してみましょう。
5.安全運転でタイヤも長持ち
急ブレーキや急ハンドル、ハンドルの据え切りは、タイヤを摩耗させる原因になります。余裕のあるブレーキやハンドル操作は安全運転につながると同時に、タイヤ寿命も延ばします。
こちらの情報は2022年1月現在のものです