Motor Sports / Time Attack > TOYOTA GR86/BRZ Race 2024 Report > ニュータイヤPOTENZA RE-10DがGR86/BRZ Cupをさらに熱くする
Vol.04
ニュータイヤPOTENZA RE-10D(ポテンザ アールイー・イチマルディー)のデビュー戦となったTOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup 2024の第5戦。
舞台となった北海道の十勝スピードウェイは、水曜日の練習走行から、決勝が行われた日曜日にかけて、気温と天候が目まぐるしく変化しました。
金曜日の占有走行では、「違和感なく使うことができた」と語る#121蒲生尚弥選手(POTENZA)が1'32.206のトップタイムを記録し、RE-10Dのポテンシャルをアピールしてくれました。
一転、気温が一気に上がった土曜日の予選では、多くのドライバーが適応に苦しむ中、#18中山雄一選手(POTENZA)がRE-10Dユーザーのトップタイムとなる1:32.899を記録し3番グリッドを獲得。続いて#7堤 優威選手(POTENZA)が1:32.944のタイムで4番グリッドを獲得しました。
気温が20℃まで下がった日曜日の決勝では、好スタートを切った中山選手と堤選手がそれぞれポジションを1つずつ上げてトップを追走。レースは終盤での逆転を予感させる展開となりましたが、このタイミングでセーフティーカーが導入され、レースは残り一周での再スタート。惜しくも逆転こそなりませんでしたが、中山選手が2戦連続の表彰台獲得となる2位、堤選手が3位表彰台を獲得し、RE-10Dの決勝での強さを証明しました。
今回は、RE-10Dの開発ドライバーを務めた堤選手と#34佐々木雅弘選手に、ニュータイヤRE-10Dの改良点についてお話を伺いました。
シリーズ中盤の十勝ラウンドで、POTENZAはニュータイヤPOTENZA RE-10Dを投入しました。昨年のチャンピオンタイヤ・RE-09Dの開発から携わることになったという堤選手に、接地性と、タイヤのウォームアップのさらなる改善が計られたRE-10Dについて語ってもらいました。
「開発では、佐々木選手とパタンが異なるタイヤを比較してきました。GR86/BRZ Cupでは、タイヤの外側の限界まで使いますが、RE-10Dでは、アウト側のスリック部分をより中央に広げることで、アウト側のブロックの接地面積がさらに広く取られています」
「アウト側の接地面が広がったことでグリップが増し、ハンドルを切っていって、クルマにGがかかった時に、『ここはしっかり使える』というところで最大パフォーマンスを発揮する作りになっています。
また、タイヤ表面のゴムも変更され、ウォームアップが向上しています。予選のような1発の速さが求められる状況でも、タイムを出しやすいタイヤになっているので、いちドライバーとしても嬉しいですね」
ドライバーが求めるグリップ力をさらに向上させたRE-10D。そんなRE-10Dが投入された直後の十勝ラウンドでは3位表彰台を獲得した堤選手ですが、ニュータイヤのポテンシャルを100%活かしきれたわけではないといいます。
「予選は路温が前日と比べて大幅に上がったことで、うまくまとめたドライバーが上位に進出できたという状況でした。自分はセッティングを詰めきれなかった部分をドライビング面である程度まとめることができましたが、RE-10Dのグリップはまだ余力がある感覚なので、今後さらに調整が必要だと感じています」
開発ドライバーの佐々木選手にも、RE-10Dのパタンについて聞きました。
「タイヤの接地面における力の分布を、ドライバーのフィードバックと計測データを基に解析した結果、タイヤと路面が接地している面の中で、よりグリップが必要とされるところの面積を広くすることによって接地性を最適化しました」
また表面のゴムに加えられた改良に関しては、このように補足してくれました。
「タイヤの表面のゴムを柔らかくすると、路面の凹凸に対する食い込みは良くなりますが、柔らかいだけでは十分なグリップは得られません。そこで、構造的な剛性が重要になります。単に柔らかくするだけではスポンジのようになってしまい、グリップが失われてしまうため、強いゴムを使う必要があります。しかし、この強さは硬さではなく、柔らかさと剛性のバランスが重要なのです。
RE-10Dの表面に使用されたゴムには柔らかさによる剛性の低下を補う技術が導入されています。グリップが求められる温度領域でしっかり食い込みが確保できるタイヤに仕上がっています」
最後に、佐々木選手が開発において特に目指したポイントについて伺いました。
「まず、走り出しのウォームアップ性の向上です。1周目の1コーナーや2コーナーでより安心してタイムを削れるようなタイヤ。どんなコースでも、ドライバーに不安を感じさせない、そんなタイヤを目指しました。また、従来のPOTENZAの特徴である優れたロング性能は維持しつつ、さらなる改善を施すことを意識しました。
RE-09Dと比べて、グリップが向上したことで、これまで以上に、誰もが乗りこなせるタイヤになっています。ただ、このタイヤの特性を十分に引き出すにはセットアップが重要で、データを取りつつタイヤを理解して使う必要があります。しかし、一度セットアップが決まれば、プロドライバーはもちろん、一般ユーザーにも楽しんでもらえるタイヤだと思います。
グリップが高いだけでなく、少しグリップが足りないと感じた場合でも、空気圧やキャンバー、サスペンションの調整で応えてくれる、そういった奥行きのあるタイヤに仕上がっています」
ニュータイヤRE-10Dが持つポテンシャルを、GR86/BRZ Cupの舞台でPOTENZAドライバーたちがどのように引き出していくのか、ぜひご期待ください。
元86/BRZレーサー(実は2013年初代ポールシッター)。
BMW&MINI Racingレースディレクター。
今シーズンは、2年ぶりにS耐に復帰。
新菱レーシングの#7新菱オートVARIS☆DXL☆EVO10をドライブ。