Motor Sports / Time Attack > TOYOTA GR86/BRZ Race 2024 Report > さらに進化するPOTENZAとGR86/BRZ Cupのドライビング
Vol.03
静岡県の富士スピードウェイで開催されたTOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup 2024の第3・4戦は、レースウィーク中に決勝レース2戦が行われるダブルヘッダー(1大会2レース制)でした。最大獲得ポイントが43点と、タイトル争いの行方を大きく左右する重要な大会となります。
予選は、ドライコンディションではじまり、徐々にウェットコンディションへと変化する非常に難しい展開となりました。そんな中、POTENZA RE-09Dユーザーの最上位を獲得したのは、ベストタイムで5番手につけた#1井口卓人選手(POTENZA)。雨が降り始めたセカンドアタックでも2番手のタイムを記録し、上位で決勝に臨むポジションを獲得しました。
翌日曜日午前に開催された第3戦では、着実に順位を上げて4位でフィニッシュ。午後の第4戦では2位表彰台を獲得し、全選手中最多得点となる合計27ポイントを獲得して、ランキングトップに4ポイント差まで迫りました。
第4戦で井口選手に次ぐ3位表彰台を獲得したのは、#18中山雄一選手(POTENZA)。予選ではドライコンディションを予想して出走を遅らせたため、ベストタイムでの順位こそ大きく伸びませんでしたが、セカンドベストでは3番手のタイムを記録し、決勝でもポジションを譲ることなくチェッカーまで危なげない走りを見せてくれました。ワンメイクへの適応を高めてきたGT500ドライバーが、本領を発揮してくれました。
今回は、今シーズンの初表彰台を獲得した中山雄一選手に、進化を続けるGR86/BRZ Cupのタイヤについて、それに合わせて進化するドライビングについて話を伺いました。
GR86/新型BRZが導入されて、以前のモデルに比べて車の剛性感が大幅に向上しました。加えてタイヤサイズが大きくなったことで、各サーキットでのラップタイムは2秒から3秒短縮されています。国内最高峰のツーリングカーレース SUPER GTのGT500クラスで活躍する中山雄一選手が、その進化について語ってくれました。
「タイヤのサイドウォールやショルダーの剛性が高まったことで、特に鈴鹿の1、2コーナーや130R、富士のAコーナーや100Rといった高荷重がかかるセクションでは、マシンが限界を超えた時のコントロールが格段にしやすくなりました」
「特に、ブレーキを踏みながら最後にハンドルを切り込んだ時に残るグリップの強さが、POTENZAの真骨頂です。剛性の向上によってタイヤの縦方向の強さと、コーナーでハンドルを切り込んだ際の安定感がさらに高まりましたが、それでもレースではPOTENZA特有のしなやかさを活かすことが求められます。向上した剛性感を意識すると同時に、本来の魅力である『しなやかさ』を十分に引き出すことも大事だと思います」
タイヤの剛性だけでなく、POTENZAが本来持っている「しなやかさ」を活かすことが重要だということ。さらに「一番のキモ」は、タイヤの曲げる力を、どのコーナーで、どのタイミングで使うのかだと語ります。
「RE-09Dは一般公道も走れるラジアルタイヤでありながら、その性能はレーシングタイヤに迫るものです。そしてこの高性能ラジアルタイヤのパフォーマンスを最大限に発揮できるのは本当に一瞬で、路面や天候といった常に変化し続けるコンディションによっても大きく変化します。そこに的確にタイミングを合わせるのは非常に難しいですね。プロクラスを戦うドライバーたちには、限界の状況で、さらに『ここぞ』というタイミングでタイヤの性能を最大限に引き出し、タイムを出す高いドライビングスキルが常に求められます」
また予選のように一発の速さが求められる状況では、タイヤの性能を最大限に引き出すためのドライビングやセッティングが特に重要だと語ります。
「コーナーに飛び込む際にマージンを取りすぎるとタイムが落ちてしまいますし、攻めすぎるとオーバースピードによって車が曲がりきれないこともあります。ドライバーによってアプローチの仕方は様々で、ハンドルを切り始める際に多くのグリップを使うドライバーもいれば、コーナー出口でグリップを活かして曲げるスタイルを取るドライバー、早めにアクセルを踏んで加速態勢に入るドライバーもいます。こうした個々のドライビングに合わせてサスペンションや足回りをどう調整するかがカギとなります。僕個人としては、今シーズンからタイヤが変わり、マシンセッティングを見直す必要がある中で、まだ完全にはつかみきれていない部分があります。そのため、自分のドライビングをさらにアップデートし、もう一歩先を探し続ける必要があると感じています」
「また、マシン自体の走行距離によって変化するボディ剛性も影響します。車体と足回り、タイヤのセットアップは非常に難しく、ドライビングに関しても正解は一概には言えません。たとえポールポジションを獲得したドライバーであっても、『もう少しうまく走れたはずだ』と感じるはずです」と中山選手が言うように、ドライバーたちは、正解のない極限の状況で、速さを求めて常に戦っています。
0.01秒を争う厳しい戦いで、細部に至る調整、そしてドライバーの感性・技術が勝敗を分けるGR86/BRZ Cup。GR86と新型BRZ、そしてPOTENZAタイヤの進化がもたらす新時代の走りが、ここにあります。
シリーズ後半戦も、加速し続けるPOTENZAドライバーたちの活躍にぜひ注目してください。
元86/BRZレーサー(実は2013年初代ポールシッター)。
BMW&MINI Racingレースディレクター。
今シーズンは、2年ぶりにS耐に復帰。
新菱レーシングの#7新菱オートVARIS☆DXL☆EVO10をドライブ。