Motor Sports / Time Attack > TOYOTA GR86/BRZ Race 2024 Report > 開幕戦勝利でディフェンディングチャンピオンがRE-09Dと共に高発進
Vol.01
GR86/BRZ Cupの2024シーズンが、5月11-12日に宮城県のスポーツランドSUGOで開幕しました。
プロフェッショナルシリーズに投入されているPOTENZA RE-09Dは、新シーズンに向けてタイヤ表面のゴムに調整が加えられ、発熱がさらに向上。これまで以上に、予選、決勝を通してグリップを引き出せる仕様になりました。
RE-09Dユーザーの予選最上位は、昨年のチャンピオン#1井口卓人選手(POTENZA)。1'35.624のタイムで4番グリッドを獲得しました。続く5番グリッドには#121蒲生 尚弥選手(POTENZA)、8番グリッドに#18中山 雄一選手(POTENZA)、9番グリッドに#160吉田 広樹選手(POTENZA)、10番グリッドに#700地頭所 光選手(POTENZA)という結果となり、上位10台のうち5台をRE-09Dユーザーが占める結果となりました。
翌日の決勝では、POTENZAドライバーがRE-09Dのロング性能の高さを活かした走りで、白熱したバトルを展開。井口選手は、スタートでポジションを1つ上げると、レース中盤にストレートで前のマシンのかわして2番手に浮上、そして最終ラップの最終コーナーでトップのマシンに並び見事な逆転勝利を決めました。その後方では、激しい4番手争いを繰り広げていた蒲生選手と#121松井孝允選手の隙をついた中山選手が、ポジションを5番手まで上げ、こちらも終盤の最終コーナーでさらにポジションを上げて4位チェッカー。蒲生選手も、最終ラップの最終コーナーで前のマシンを捉えて5位でチェッカー。さらに吉田選手が8位、#293岡本大地選手(POTENZA)が9位、#34佐々木 雅弘選手(POTENZA)が10位に続き、上位10台中6台をRE-09Dユーザーが占める結果となりました。
今回は、アップデートが施されたRE-09Dについて、開発チームのコメントを交えてご紹介します。
昨シーズン、井口選手とともにシリーズチャンピオンを獲得したPOTENZA RE-09Dに、さらなるアップデートが施されました。進化したRE-09Dについて、モジュール設計担当の源馬和行さんに伺いました。
「23年版のRE-09Dに対するドライバーへのヒアリングで、特に要求が高かったのがリアタイヤのウォームアップに関するものでした。フロントには熱が入っていても、リアへの熱の入りが十分ではなく、前後のタイヤの発熱のタイミングにズレが生じていたことで、ドライバーがタイヤのグリップを最大限に引き出すことができていませんでした。そのため、リアにもしっかりと熱が入るよう表面のゴムに改良を加えたことで、前後4本の全てのタイヤを同じタイミングでしっかりとグリップを引き出せるようにしました」
製品企画担当の加藤泰聖さんが続けます。
「開発では、タイヤの性能を全体的に向上させることを基本コンセプトとしています。グリップ力は、昨年までとほぼ同等ですが、発熱がよくなったことで、これまで以上にタイヤのピークを感じやすくなり、グリップ性能を引き出しやすくなっています。また、表面のゴムをより柔らかくしたことで、ウェットコンディションでのグリップ性能も向上しています。GR86/BRZ Cupにはプロからアマチュアまで幅広い方が参戦しているので、どのようなコンディションでも、さまざまなスキルレベルのドライバーが使っても、しっかりとグリップを発揮するタイヤが求められます。リアのウォームアップ性能の向上という点に注視ししつつ、特定の性能が損なわれることがないように、全体の性能をバランスよく向上させた扱いやすいタイヤに仕上げました」
一般的に、タイヤのゴムをよりソフトに寄せ、熱の入りをよくするということは、熱ダレや耐摩耗性の低下などの副作用を伴うと考えられます。しかし、今回のアップデートでは、ウォームアップ性能と耐久性という背反関係にある要素を互いに損なうことなく両立することができたと材料設計担当の島田友衣さんは語ります。
「熱の入りが良いということは必然的にタイヤの耐久性を低下させます。タイヤ表面のゴムが柔らかくなることで、耐摩耗性の低下が懸念されますし、発熱が良くなる分だけ熱ダレを起こしやすくなります。今回の開発では、背反する相関関係にある要素同士の差が大きくならないように、RE-09Dのロング性能を損なうことがないように発熱を向上させました。難しい挑戦ではありましたが、開幕戦の結果からRE-09Dの耐久性が損なわれていないことが証明できたと思います」
開幕戦を制した井口選手は、ウォームアップ性能が向上したRE-09Dのパフォーマンスに確かな手応えを感じたといいます。予選タイムでは上位には届きませんでしたが、決勝では、その耐久性とグリップ性能を遺憾無く発揮しました。また、一発の速さに関しても、今後、車高やアライメントなどのセットアップを詰めていくことで、さらなる向上が期待できる『伸びしろ』だと感じたようです。しかし、MS推進部の南波城さんは、タイヤ性能以上の要素が開幕戦の勝敗を分けたと語ります。
「SUGOは抜きどころが少ないコースですし、本来であれば予選で上位に入れないと優勝は厳しかったと思います。開幕戦の見事な逆転勝利は、RE-09Dの性能だけではなく、井口選手、そしてチームの方々の力が大きかったと思います。次戦以降も、全国のサーキットで各チームが予選に対してRE-09Dをどのようにアジャストしていくのか、しっかりと見守りたいと思います」
カーナンバー1の熱い走りに、心を動かされた開発チーム。モジュール設計担当の高木穣さんが最後にこうまとめてくれました。
「今回は、井口選手の素晴らしい走りが、我々に勝利をもたらしてくれました。決勝は見ていて本当に胸が熱くなる展開でした。また、#7堤優威選手(POTENZA)も、決勝中にファステストを記録して、RE-09Dの速さを証明してくれました。これからもドライバーたちの熱い走りを支え、GR86/BRZ Cupを盛り上げていけるよう、努力していきたいと思います」
開幕戦から熱い走りを見せてくれたPOTENZA RE-09D、今シーズンのさらなる活躍にぜひ注目してください。
元86/BRZレーサー(実は2013年初代ポールシッター)。
2024年BMW&MINI Racingレースディレクター。
今シーズンは、2年ぶりにS耐に新菱レーシングより復帰します。