Motor Sports / Time Attack > Formula Drift JAPAN 2024 REPORT > FORMULA DRIFT JAPAN 2024 Report Rd.1 FUJI SPEEDWAY
Formula Drift JAPAN 2024 Report
Rd.1 FUJI SPEEDWAY 4/6~7/2024
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タイヤのセッティングで
さらなる高みの領域へ
タイヤのグリップ力が勝負のカギを握る現代ドリフト
フォーミュラドリフトジャパンに挑む草場佑介。
RE-71RSのグリップを活かした高速ドリフトで
シリーズチャンピオンを狙う。
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昨シーズン、クルマは完成した
あとはセッティングで性能を引き出すのみ
クスコレーシングからフォーミュラドリフトジャパンに参戦している草場祐介選手。
2024シーズンは、GR86での参戦3シーズン目となる。
マシンのパッケージに大きな変更はない。キャロッセ製の完全ドリフト仕様マシンは、重量バランスと冷却効率、そしてクラッシュからのリカバリーを考慮して、ラジエーターをリアトランクに配置、さらに電動ファンによって冷却される。
A80スープラなどに使われていた3.0L直列6気筒ターボエンジン2Jをベースにフルチューンナップが施され、ギャレット製タービンを組み合わせたエンジンは、約900〜1000psを発揮。そして、その駆動力がシーケンシャルミッションを介し、リアタイヤに伝えられる。
足もとを支えるタイヤはPOTENZA RE-71RS。ホイールはPOTENZA RW007を使用している。
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昨シーズンは、予選でのアベレージ得点を上げることを目標に取り組み、シリーズランキング14位を獲得した草場選手。彼の走りには緻密さと正確性、そして、高い技術力がある。FDJメンバーの中でもトップクラスであることは間違いない。だが、精密で正確な彼の人柄を表すようなドリフトスタイルは、逆に言えば意外性が少ない。大きなミスをすることはほとんどないが、爆発的な高得点を勝ち取るような走りではなく、常に安定した得点をマークする走りだ。
「僕には同じチームの松山北斗選手や箕輪大也選手のような、120点!! と言いたくなるような爆発的な走りは正直ないと思っています。でも、ミスをせずにきっちりと正確に走ることはできる。それならば、そこをさらに伸ばそうと。もっと速く、もっと深いアングルで、正確に走ることができれば、その先には優勝が待っていると思っています」と草場選手は言う。
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そこで走りの迫力を評価される「パッション」の点数を上げるべく、これまでに以上にタイヤのグリップを高めてチャレンジしたのが2023シーズンだった。
ドリフトはリアタイヤを滑らせる競技。ドリフト競技が生まれた20年以上前は、グリップの低いタイヤを履くことでドリフトをしていた人が多かったが、それでは角度も浅く、速度も低い。
そこでより高いグリップのタイヤを滑らせて走ることで、高速ドリフトが可能になり、より深いアングルでのドリフトも可能になった。
だが、グリップ力の高いタイヤはドリフト走行中にグリップしてしまう、いわゆる「戻る」現象が起きやすい。そこでリスクをともなうがグリップ力を引き出すために、あえて空気圧を下げてチャレンジし、予選では一定の手応えを感じてきた。
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「クルマのパッケージとしてはほぼ完成の域にあると思います。1000ps近いパワーにクイックチェンジのファイナルギアが備わり、パワーも軽さもGREAT8以上に進出するマシンと同等の戦闘力がある。乗りにくさを感じていた部分は、解消されました。あとはセッティングでどうやってもう一段上の領域にいけるかだと思います。」
高性能なRE-71RSのグリップを最大限に活かす方法は何か。スイートスポットを狭めて性能を引き出すことは難しくないが、それだけでは追走トーナメントを勝ち抜けない。
単独走行では、理想的なラインを深いアングルでトレースし、迫力のある走りをすれば高得点が獲得できる。しかし、追走トーナメントでは、対戦相手の速さや角度、煙に合わせて走らなければならない。そのため、許容範囲が広いことが求められる。しかし、そのために限界を下げると、今度は勝負にならなくなってしまう。
深いアングルのドリフトを実現するには、フロントタイヤの大きな切れ角が必要となるが、それだけではない。リアタイヤのグリップを高め、リアサスペンションを沈めることで、フロントタイヤの荷重を減らし、スリップアングルを増やす。意図的にフロントタイヤをスリップさせることで、より深いアングルでのドリフト走行が可能となる。そのためには、いかにリアタイヤのグリップを向上させるかが重要となる。そしてこれらのテクニックとセッティングが、勝負のカギになる。
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「今シーズンはタイヤの使い方をさらに追求していきます。それがワンランク上の走りに繋がり、その先には優勝が見えてくると思っています。そのため開幕戦では練習走行から積極的にタイヤのセッティングを変えています。これまででは考えられないような空気圧にもトライしました。無謀なチャレンジというわけではなく、ドリフト競技のプロフェッショナルエンジニアをアドバイザーに迎えてアドバイスを受けています。今回は、その手応えを掴むことができました。」と草場選手。
開幕戦では予選15位を獲得。予選1本目では、駆動系にトラブルが出てノーポイント。予選は2本の走行しか許されないため、一発勝負となった。ミスが許されない状況であったがゆえに、いつも以上に安全マージンを保った走りだったが、それでも予選15位を獲得。余裕を持って決勝トーナメントに進出できたことは大きな自信となった。
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決勝ではそのセッティングが大いに活かされることになる。
「今回は練習走行から自分とGR86には速さがあることを実感していました。速いドリフトができるので、これは武器になります」と草場選手。
そして、その言葉通り、これまでにない高速ドリフトを実現した。
FDJのシリーズチャンピオン経験があるチームメイトの松山北斗選手を相手に、速さでアドバンテージを得て勝利を収め、TOP32を突破。TOP16での、WRC(世界ラリー選手権)2連覇中で、昨年のFDJに2度スポット参戦し、優勝と総合2位を獲得という見事な結果を残したカッレ・ロバンペラ選手との対戦でも、ドリフト中の速さを武器にロバンペラ選手に見事勝利し、GREAT8進出を果たした。
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「GREAT8で対戦したチャナポン選手は僕と同等かそれ以上の速さがありました。その速さに、追い詰められて敗退してしまいました」
今大会随一のスピードをみせていたチャナポン選手に立ち向かった草場選手の速さは、今シーズンの今後の戦いにとって大きな武器になる。新たなセッティングにはまだ取り組み始めたばかり。タイヤの性能を引き出すセッティングと、RE-71RSの強大なグリップ、そして荷重を確実に支えてタイヤと路面を常に均一にコンタクトさせる、強靭な性能を持ったホイールRW007が彼を支えている。
次戦、鈴鹿ツインサーキットで草場選手が見せる走りに、期待してほしい。
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#77 Team Cusco Racing GR86 草場佑介 | |
予選15位 | 86点(ライン32点アングル29点スタイル25点) |
---|---|
GREAT8 | エス・チャナポン戦 敗退 |
Result | 総合結果7位 |