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POTENZA SETTING DATA
SPECIAL EDITION
POTENZA RE-71RSは、こうして使いこなせ!!
高性能を生かしきってタイムアップするカギは、
接地を極める“アライメントセッティング”にある。
サーキットで高性能を磨き上げたPOTENZA RE-71RSは、路面をしっかりとつかみ高いグリップパワーを発揮するため、“接地”にこだわったスポーツストリートタイヤだ。数多くの最新技術が盛り込まれたRE-71RSのパフォーマンスを引き出すには、従来の考え方とは異なるアライメントセッティングが適しているという。さて、そのポイントはいかに?
タイヤにやさしいセッティングが速さも引き出す。
優れたグリップ力を発揮させるため、POTENZA RE-71RSは新たに開発した構造や非対称トレッドプロファイル、非対称パタンを採用している。それはコーナリング中でも最大限の接地面積を確保することにこだわった結果だった。RE-71RSは、従来モデルと一線を画した設計思想に基づいて生み出されたと言ってもいい。そのため、採用された先進技術に即したアライメントセッティングを施すことが、RE-71RSのハイパフォーマンスを最大限に発揮させることにつながり、さらには接地面内での偏減りを抑制しタイヤライフにも好影響を与える。
では、どのようなセッティングを行えばいいのだろうか? この問いに答えてくれるのは、開発に携わりPOTENZA RE-71RSを知り尽くしたレーシングドライバー 佐々木雅弘選手。そして、各地のサーキットを舞台にPOTENZAの可能性を追求する「POTENZA CIRCUIT ATTACK(PCA)」のマシンを手がけた、オートプロデュースボスの藤岡和広代表にもセッティングの“勘どころ”について話を聞いた。
場所は筑波サーキット コース1000。車高調装着で足回りを引き締めてはいるものの、そのほかはオリジナルスペックに近いトヨタ86を用意して、佐々木選手が試乗に臨む。前後とも255/35R18サイズのRE-71RSを装着し、従来のアライメントセッティングとRE-71RSに合わせた数値で乗り比べ、違いを再確認。そのインプレッションもとに、“乗り味がどう変わるのか?”についても解き明かしていく。気になるアライメント数値は、従来はフロントがキャスター:5°50、キャンバー:-3°27、トー:0.03°、リアはキャンバー:-2°50、トー:0.04°。一方、RE-71RSに合わせた数値はフロントがキャスター:5°30、キャンバー:-1°24、トー:0.03°、リアはキャンバー:-2°50、トー:0.04°と、フロントのキャンバーとキャスターを起こしている。
佐々木雅弘選手のアドバイス
サーキット走行に照準を合わせてアライメントセッティングをすれば、コーナリング性能を高めるためにフロントキャンバーを強くつけるのはあたりまえでした。そうしないときちんと接地しなかったわけですね。POTENZA RE-71RSは、非対称トレッドプロファイル、非対称パタンを採用することで、タイヤの外側をしっかりと使えるように開発されています。だから、キャンバーを強くつけなくても、すごくコンパクトに、タイトに曲がれます。今回走行した筑波のコース1000はヘアピンコーナーが多いサーキットです。しっかりハンドルを切って曲がり、そして早く戻す、という走り方で“タイヤを縦に使う”ことがタイムアップのポイントになりますが、このドライビングにも強くキャンバーをつけないセッティングが合っていますね。
今回の走行では255/35R18とワイドなRE-71RSを組み合わせていますが、キャンバーを起こしているのでさまざまな場面で高い接地感が得られました。幅広いタイヤを幅広く使えるセッティングと言えますね。そして、ステアリングを切り込んでいったとき、どのような舵角でもアウト側の大きなブロックがしっかりと路面を捉えグリップする感覚が印象的でした。強くキャンバーをつけていると、切り始めのグリップ感が心もとないのですが、それとは大きな差を感じました。コーナリング中、常にしっかりしたグリップが得られる……これは大きなアドバンテージだと思います。また、キャンバーを強くつけないことはブレーキ性能をさらに発揮させることにもつながります。
一方、ドライブフィールにも大きく変化がありました。キャンバーを起こしたRE-71RS用のセッティングのほうが、ステアリングフィールが軽くなり、路面からのインフォメーションが繊細に伝わってくるようになります。ドライバーは敏感に反応することができ、的確でスムーズな操作が可能になりますし、街中でもより快適に走れると思います。RE-71RSはグリップ力が高いゆえ、セッティングしだいではキックバックが強く感じる場合があるので、サーキットだけでなくストリートでも愛車に乗っている方にとって、これもまた大きなメリットではないでしょうか。タイヤの内側が顕著に減る偏摩耗も、より抑えられるはずです。
POTENZA RE-71RSは、モータースポーツを存分に楽しめる性能を持っていますが、あくまでもストリートタイヤです。サーキットで履き替えるのではなく、日常的に使用される場合も多いはずです。ノーマルに近いアライメントセッティングですべてをまかなえれば、タイヤにもドライバーにも優しいはず。それでタイムアップにもつながるのですから、ぜひ参考にしていただきたいですね。ポイントはPOTENZA RE-71RSがグリップ力を最大限に発揮させるため、路面との接地を徹底的に追求したタイヤだということ。それに合わせたアライメントセッティングを施して、RE-71RSのパフォーマンスを味方につけてください。
藤岡和広氏のアドバイス
排水性を確保する太い主溝を2本配置し、アウト側にももう1本縦溝を設けたRE-71RSは、ウェット路面での性能にも配慮したストリートラジアルです。深い溝の採用はスポーツタイヤとしてはハンディキャップなのではと思ってしまいますが、RE-71RSは優れたグリップ力を発揮します。とくに縦方向のグリップが高いので、これまでの走りよりブレーキングを少し遅らせてもコーナーをクリアできてしまいます。このあたりを頭に入れながら走行するとタイムアップにつながるはずです。
今回の走行では、まずフロントに関していわゆるハイキャスター、ハイキャンバーという、これまでの走行会等で一般的だったセッティングを施しました。サーキットを走らせる場合、トーアウトに調整しますが、この状態でハイキャスター、ハイキャンバーだとタイヤのイン側が減りやすくなります。外側はまだ溝がたっぷりあるのに、内側はツルツル、ということを経験した方は少なくないのではないでしょうか。これに対して、2回目の走行ではセッティングを変更しキャスターとキャンバーを起こしています。これはRE-71RSの接地性を高めるためですが、スマートフォンにインストールした簡易のサーモグラフで、2回の走行におけるトレッド面の温度を計測すると、キャンバーとキャスターを起こした走行のほうがより均一に温まっていました。トレッド面が幅広く接地している証拠ですね。
サーキット走行でタイムを出すには、コーナリング中のグリップを考えて強くフロントキャンバーをつけるセッティングを施すのが一般的でした。これに対してRE-71RSは、アウト側の大きなブロックをなるべく早く路面にしっかりと接地させ、高いグリップ力を引き出すことが速さにつながるので、キャンバーを従来より起こすセッティングが適しています。これまではさまざまな条件に合わせながらタイヤをグリップさせ、クルマを安定させようとすると、キャンバーをつける方向でセットアップする必要がありましたが、RE-71RSを装着したらこういった考え方をもとにアライメントをとっていくと、いい結果が出るのではないかと思います。
そしてアライメントセッティングのほかにも、POTENZA RE-71RSの性能を引き出すために大事なことがあります。それはサスペンションの剛性です。グリップ力が上がるとそのぶんロールが大きくなるので、ロールを抑えた剛性の高い足にしていく必要があると思います。私たちチューナーにとっても、POTENZA RE-71RSは次世代のスポーツラジアルという印象です。アライメントセッティングやクルマづくりも、その先進性に合わせた考え方を採り入れることがタイムアップの近道になると考えています。