タイヤ交換は、タイヤ専門店などに依頼する方法と、自分で行うセルフ交換の2つに分けられます。
セルフ交換をする場合は、安全な作業場所の確保や正しい知識と手順が欠かせません。誤った方法で作業すると、思わぬ不具合につながることもあるため、細心の注意が必要です。
しかし、タイヤのトラブルはいつ起こるか分かりません。万が一に備えてタイヤ交換の手順を身につけておけば、いざというときに落ち着いて対応できるでしょう。
この記事では、自分でタイヤを交換する際の手順を、画像を交えながら分かりやすく解説します。
タイヤ交換を自分で行う前に
タイヤ交換を自分で行う際は、以下の3つを確認・準備してから作業に取りかかりましょう。
- タイヤの仕様や状態を確認
- 必要なものを用意
- 安全な作業スペースを確保
タイヤの仕様や状態を確認
タイヤ交換を行う際は、事前にタイヤの仕様(回転方向・向き)や、タイヤの状態を確認しておきましょう。
タイヤには、回転方向や内側・外側の向きが決まっているタイプと、そうでないタイプがあります。指定された方向や向きで装着しないと、タイヤ本来の性能が発揮できないだけでなく、安全面にも影響を及ぼす可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
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また、交換する前に装着するタイヤの表面に亀裂やヒビ、偏摩耗などが発生していないかを確認しましょう。加えて、摩耗の進行具合にも注意が必要です。残り溝が1.6mmになると「スリップサイン」が露出し、このサインが出ているタイヤは法律上使用できません。タイヤはゴム製品であり、ゴムは時間の経過とともに劣化するため、特に長期間保管してあったタイヤは注意が必要です。

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タイヤの仕様や状態を確認
タイヤ交換の際には、交換するタイヤのほかに、以下の道具を用意しておきましょう。
用意するもの | 用途 |
---|---|
ジャッキ | 車体を上げるため |
L型レンチ(または十字レンチ) | ホイールを止めているナットを外したり締めたりするため |
トルクレンチ(トルクを設定できる器具) | ボルトやナットを車両指定の力(トルク)で正確に締め付けるため |
輪止め | 車が動かないようにするため |
軍手 | 汚れやキズから手を守るため |

安全な作業スペースを確保

タイヤ交換を行う際に最も重要なのは、安全な場所で作業することです。
車体は1トン以上もある重たいものなので、不安定な場所でタイヤを外すとジャッキが外れる場合があります。その結果、車体にダメージを与えるだけでなく、作業者自身がケガを負ってしまう恐れがあります。
したがって、できるだけ平坦で、舗装された地面やコンクリートの上などの安定した場所で作業を行うようにしましょう。砂利や土の上などでの作業は危険な場合があるので、避けてください。
また、タイヤを外したり着けたりするので、余裕のある作業スペースを確保しましょう。適切な作業場所を確保できない場合には、無理をせず、タイヤ専門店などに作業を依頼しましょう。
自分でタイヤ交換を行う方法
それでは、基本的なタイヤ交換方法を順を追ってご紹介しましょう。手順ごとに注意点やポイントも紹介していますので、タイヤのセルフ交換にお役立てください。
※タイヤ交換時の注意点
タイヤを交換する際は、正しい方法をしっかりと守って行ってください。間違った方法でのタイヤ交換は、作業時や走行時にトラブルが発生するなど、危険です。
また、作業環境で安全の確保ができなかったり、作業手順に不明な点がある場合は、無理にセルフで作業せず、タイヤ専門店などに依頼しましょう。
STEP1.車体が動かないように輪止めをかける
まず、AT車であればPレンジに入れ、MT車では1速に入れておきます。サイドブレーキもしっかりとかけましょう。

交換するタイヤとは対角線上にあるタイヤに輪止めをかけて、車体自体が動かないようにします。
たとえば右前のタイヤを作業する場合は、左後ろのタイヤに輪止めをかけておきます。
車体が不安定にならないようにすることが大切です。

STEP2.ホイールナットを少しだけ緩める

次に、ホイールを車体に固定するためにある「ホイールナット」というネジを少しだけ緩めておきます。
ホイールレンチを使って反時計回りに力をかけてすべて緩めますが、軽く緩める程度で構いません。
強く締まっている場合は、レンチのできるだけ先端を持って体重をかけるようにすると緩みやすくなります。
アルミホイールであれば、ナットの位置はそのまま確認することできます。
一方、スチールホイールにはホイールキャップが付いていることがあります。ホイールキャップを外さないと、ナットを緩めることはできません。
■ホイールキャップの外し方
レンチの後ろ部分の平らな部分やヘラ状のものを使用して、ホイールとキャップの間に差し込み、キャップを外します。

ホイールキャップを外すと、ナットの位置が確認できました。

STEP3.ジャッキを使ってボディを上げる
ボディの下にあるジャッキアップポイントを探して、そこにジャッキを当てます。
ジャッキアップポイントはボディの縁(フチ)の部分にあり、その場所には凹みや三角の印が付いています。

ジャッキアップポイントを確認したら、ジャッキの先端にある溝に合わせて固定します。

溝が合っていないと、ジャッキアップポイント自体が曲がってしまうことがあります。
また、適当な位置にジャッキをかけるのは危険なので、分からない場合は取扱説明書で確認しましょう。
ジャッキアップポイントにジャッキを確実に当てたら、タイヤが路面から少し浮き上がるまで持ち上げます。タイヤが少し浮く程度でよく、あまり高く上げる必要はありません。
高く上げ過ぎてしまうと、車体が不安定になり大変危険ですので注意してください。

ジャッキは事前に少し伸ばしておくとスムーズに作業が行えます。
STEP4.ナットを緩めてタイヤを外す
車体を上げたら、軽く緩めてあったナットをすべて外して、着いているタイヤを取り外します。


順番は特に決まりはありませんが、一番上のナットを最後に外すと、途中でタイヤが手前に倒れてくるのを防ぐことができます。
タイヤとホイールは重たいので、注意しながらしっかりと手で押さえるようにして地面に下ろします。
※ポイント
外したタイヤとホイールは車体の下に入れておくと、万一、ジャッキが外れたりした場合に、車体が落ちてしまうことを防ぐことができます。

STEP5.タイヤを装着して、仮止めをする
タイヤを外したら、新しく装着するタイヤを車体に取り付けます。
事前にホイールと車体側のナットがはまる位置を確認して、向きを合わせてから取り付けるとスムーズです。
合っていないと、重たいタイヤとホイールを手で持ちながら回転させないといけないので負担が大きくなってしまいます。

車体に合わせたら、曲がったり、傾いたりしていないことを確認しながら、しっかり奥へと装着します。曲がったまま無理に装着すると脱落などのトラブルの原因になるため、確実に取り付けましょう。
タイヤを8時20分の場所で、体の向きは正面にして下から支えるように持つと楽に行えます。

そして、ホイールとナットの座面形状が一致していることを確認してください。

一致していることが確認できたら、ナットを時計回りに回して手で入れて仮止めします。
その際、ナットの内部にゴミやホコリが入っていないかを確認してから入れるようにしましょう。息を軽く吹きかけてやるとより確実です。
最初に一番上のナットを入れると、手前に倒れてくることを防ぐことができます。
STEP6.ナットをガタがなくなるまで締め付ける
すべてのナットを仮止めしたら、レンチでホイールがガタつかなくなるまで時計回りに締め込んでいきます。

1カ所をいきなり締めてしまうのではなく、それぞれのナットを均等に2回から3回に分けて順番に締めていきます。
締める順番については時計まわりなど、順番に横へと移動するのではなく、できるだけ対角線の順で行うと、確実に締めることができます。

STEP7.ジャッキを下ろしてナットの本締めをする
すべてのナットをガタがなくなるまで締め込んだら、ゆっくりとジャッキを下ろして、タイヤを地面に着地させます。
完全にボディが下りて、力がかからなくなったら、ジャッキを取り外します。

ジャッキを下ろしたら、レンチを使ってすべてのナットの本締めを行いますが、仮締めの時と同様に2回から3回に分けて対角線の順で均等に締めていきましょう。
車種ごとに設定された力で本締めをするには、トルクレンチ等トルクを設定できる工具を使います。
■トルクレンチ

この本締めは、必ずトルクレンチを使用し、自動車メーカーが定める規定のトルクで正確に締め付けてください。
昨今、整備不良による脱輪事故が全国的に相次いでおり、最悪の場合、走行中にタイヤが外れて重大な人身事故につながる恐れがあります。
トルクレンチを使わず手で締めると、締め付け不足や過剰締め付けを招き、走行中にホイールが外れる「脱輪事故」につながる危険があるため、絶対に避けてください。
最後に輪止めを外します。

以上でタイヤ交換の作業自体は終了です。
STEP8. 交換が完了したら、空気圧を確認し走行
交換作業が済んだら、タイヤの空気圧が車両指定の値になっているかを確認しましょう。保管していたタイヤや新品タイヤは、自然に空気が抜けていたり、充填が不十分だったりすることがあります。もし指定値に満たない場合は、必ず適正な値まで充填してください。
その後、試運転を行って異常がないかを確認します。
いきなりスピードを出したり、コーナーを勢いよく曲がるなどは避けてください。
走りながら振動や異音がないかなどを確認します。
タイヤ取り付け後、約100km走行した段階で、再度ホイール・ナットが緩んでいないか、トルクレンチを使って点検(増し締め)を行ってください。走行することで部品が馴染み、初期の緩みが発生することがあります。
まとめ
タイヤは車の部品の中で唯一路面と接している保安部品であり、「車両の重量を支える」「駆動力や制動力を伝える」「路面からの振動を和らげる」「進行方向に曲がる」といった重要な役割を果たしています。そのため、交換する際には安全な作業場所の確保や正しい知識と手順が不可欠です。
自分でタイヤ交換を行う方法を知っておくと、パンクなどのトラブル時に役立ちます。しかし、安全な作業場所を確保できない場合や、少しでも自分でタイヤ交換に不安を感じる方は、無理せずタイヤ専門店に依頼することをおすすめします。
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