タイヤの残り溝は、車の安全性に直結する重要な要素です。残り溝の深さを把握したいとき、専門的な計測器がなくても、簡易的にチェックする方法があることをご存知でしょうか。
本記事では、硬貨を使ったタイヤの残り溝の測り方やその注意点を紹介します。さらに、タイヤの溝が持つ重要な役割について詳しく解説します。
残り溝が浅くなると、ハイドロプレーニング現象による制動距離の増加など、安全性に大きな影響を及ぼしやすくなりますので、最後までご覧ください。
硬貨を使ったタイヤの残り溝の測り方
硬貨を利用してタイヤの残り溝を測る方法は、手軽なチェック方法として知られています。しかし、この方法を使う際には、いくつかの注意点があります。
- タイヤが冷えているときに測る(ヤケドの危険性)
- 溝は1つだけでなく、周方向の全ての溝を測る
- 硬貨を使った測定方法は正確ではない(計測器を用いるほうが正確)
最も重要な点として、硬貨を使った方法は、あくまで簡易的な目安であり「正確な測定ではない」と理解しておくことが必要です。
タイヤの溝は、排水性能・駆動力・制動力・操縦安定性の維持または向上といった、車の安全性を保つ重要な役割を担っています。したがって、正確な測定はタイヤ専門店など点検を依頼することをおすすめします。
これらの点を踏まえたうえで、硬貨を使った残り溝の測り方を見ていきましょう。
5円玉を用いて溝を測る方法
5円玉で、サマータイヤ(ノーマルタイヤ・夏タイヤ)の残り溝を測る方法を紹介します。この方法では「五円」の文字の見え方で判断します。
5円玉を 垂直にタイヤの溝に差し込んだとき、「五」の文字の三画目の横線部分が見えたら残り溝は約4mmです。この状態は、摩耗などによってタイヤの性能が低下し始める目安となるため、交換を検討する時期といえます。
さらに「五円」の文字がすべて見えたら残り溝は約1.6mmであり、即座にタイヤ交換が必要な状態です。なお、即交換のサインは、タイヤに付いているスリップサインでも確認することができます。
スタッドレスタイヤは100円玉を用いて溝を測ることが可能
冬用タイヤであるスタッドレスタイヤの場合は、100円玉で残り溝を測ることができます。この方法では「100」の文字の見え方で判断します。
100円玉を横向きに差し込んだとき、額面の「1」の文字が見えたら残り溝は約5mmで交換の目安となります。
なお、スタッドレスタイヤは、プラットホームが露出すると冬用タイヤとしての使用ができません。プラットホームが露出した状態で使用を続けると、積雪路や凍結路での走行時にスリップする可能性が高くなるため、この状態になったら交換をおすすめします。
スリップサインやプラットホームについての詳細は、以下のリンクをご参照ください。
タイヤの残り溝が浅いとどうなる?
ここでは、残り溝が浅くなった場合に起こりうる主な問題について解説します。
これらの問題は、単に車の性能低下だけでなく、法律違反や重大な事故につながる可能性もあるため、十分に注意が必要です。
整備不良で道路交通法違反となる
タイヤの溝の残量は、道路運送車両の保安基準第9条によって規定されています。この基準によると、1箇所でもスリップサイン(残り溝1.6mmを示すサイン)が出たタイヤは、使用してはいけないとされています。
保安基準に抵触すると「整備不良車両」として扱われ、違反点数と反則金が科されることになります。車検にも通りません。
タイヤの残り溝の管理は、法律遵守の観点からも非常に重要です。定期的なチェックを怠らないようにしましょう。
※出典元:使用限度について|一般社団法人 日本自動車タイヤ協会
https://www.jatma.or.jp/tekisei/userfile02.html
※出典元:交通違反の点数一覧表|警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/torishimari/gyosei/seido/tensu.html
※出典元:反則行為の種別及び反則金一覧表|警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/torishimari/tetsuzuki/hansoku.html
ハイドロプレーニング現象が起こりやすくなる
ハイドロプレーニングとは、タイヤと路面の間に水の膜が形成されることで、タイヤが路面と接触せずに浮いてしまう現象です。この現象が発生すると、制動距離(ブレーキが効き始めてから車が完全に停止するまでの距離)が長くなったり、ハンドルやブレーキ操作が効かなくなったりと、非常に危険な状態に陥ります。
特に雨天時に発生しやすいのですが、この現象を防ぐ重要な役割を果たしているのがタイヤの溝です。溝には、タイヤと路面の間の水をかき出す排水性能や、駆動力・制動力・操縦安定性を向上させる働きがあります。
残り溝が浅くなると、これらの機能が低下し、ハイドロプレーニング現象が起こりやすくなります。新品タイヤでも高速走行時には起こりうる現象ですが、溝が浅くなると、より遅い速度でも発生することが試験によって確認されています。
まとめ
本記事では、5円玉や100円玉を使ったタイヤの残り溝の簡易測定方法を紹介しました。ノーマルタイヤは5円玉、スタッドレスタイヤは100円玉で残り溝の目安を測ることができますが、これらはあくまでも簡易的なチェック方法であることに注意が必要です。
タイヤは路面と唯一接している保安部品であり、「走る・曲がる・止まる」という車の基本性能を担っています。その性能を支える重要な要素の一つがタイヤの溝です。残り溝が浅くなると、安全性に大きな影響を及ぼします。
安全運転のためには、硬貨での測定方法は日常の簡易的なチェックとし、正確な残り溝の測定は、タイヤ専門店など整備士による専門的な点検を受けることをおすすめします。
ブリヂストンでは、タイヤの無料点検サービスを提供しており、必要に応じて交換まで対応可能です。タイヤの状態が気になる方は、お気軽にご来店ください。定期的なタイヤチェックを行い、安全で快適なドライブを楽しみましょう。