タイヤのパンクには、「異物を踏む」以外にも原因があります。
どのような原因があるかを知ることで、日常点検でパンクの兆候を発見しやすくなるだけでなく、走行中に、パンクに気付いたときに安全な方法で対処できるようになります。
タイヤのパンク原因について知ろう
パンクの原因は大きく分けて3つあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
パンクの原因 1:釘などの異物が刺さった
路面には様々な異物が落ちているため、走行中に釘やガラス片、鋭くとがった石などをタイヤで踏んでしまうことがあります。乗用車用タイヤはチューブレスタイヤなので、異物を踏んだ場合でも風船が破裂するような現象は起きません。しかし、異物が刺さったまま走行を続けると、異物とゴムにできた穴の間から空気が抜けてしまいます。
パンクの原因 2:縁石に擦ったりぶつけたりしてしまった
タイヤの側面は、路面と接するトレッド部分よりも薄く、走行時にはタイヤの中でもっともたわみが激しい部分です。なお、この部分を縁石に擦ったりぶつけたりしたことがある人は、運転者の6割強にものぼります。
縁石にこすったことで中のワイヤーが切れてしまったり、ゴムが傷ついて小さな亀裂が生じてしまったりすることがあります。さらには、傷を放置したまま走行を続けると、傷が広がってしまいます。
※ブリヂストンによる調査。全国の18~69歳のドライバー1,000名(男女各N= 500)を対象にインターネット調査を実施。調査期間は2011年6月17日(金)~6月19日(日)
パンクの原因 3:空気圧不足
タイヤの空気圧が不足すると、走行時にタイヤが大きくたわんで変形を繰り返すため、クルマの乗り心地が悪くなります。
変形したまま走り続けるとタイヤを支える構造が損傷し、トレッド面にクラックが生じてしまうのです。また、偏摩耗の原因にもなり、十分にブレーキ性能を発揮できなくなってしまいます。
パンクしても走行できるランフラットタイヤとは
ここまでパンクの原因について解説してきましたが、万が一パンクしたとしても、一定距離を走行できる「ランフラットタイヤ」というものがあります。
このタイヤはサイド部分に配置された補強ゴムがクルマの荷重を支える構造で、パンクしても時速80kmで約80kmの距離を安全に走行可能です。
これにより、クルマを路肩に止めてスペアタイヤと交換しなくても、近くのタイヤ販売店等へ移動することができるだけでなく、スペアタイヤ自体を積む必要がなくなり、車内のスペースを広く使えます。
パンクとバーストの関係性を理解する
もし、パンクに気付かず走行を続けているとタイヤがバーストしてしまい、事故へとつながる危険性があります。
パンクというと、タイヤが弾けてしまうようなイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし実際には、何らかの原因でタイヤが傷ついたことによって空気が抜けていく、空気圧不足となる現象です。
一方バーストは、大きな破裂音とともにタイヤの構造が破壊され、トレッド面が弾けて爆発したような状態になることを指します。高速走行中に発生しやすく、とても危険です。
バーストを引き起こす原因の多くは、タイヤにできた傷の放置や空気圧不足です。つまりはパンクの原因を知り、適切に対処することで、バーストによる事故を未然に防ぐためのリスクヘッジとなるのです。
タイヤのパンクを防ぐ対策
タイヤがパンクする時にはいくつかの兆候があり、多くは乗車前の日常点検や空気圧点検で見つけることができます。パンクの兆候をチェックするポイントを見ていきましょう。
タイヤの亀裂や傷を乗車前にチェック
タイヤの表面に亀裂や傷がないか、乗車前にチェックしましょう。
亀裂や傷を見つけた場合は、すぐにタイヤ販売店等で点検もしくは交換しましょう。
また、異物を踏んで起きるパンクには、ゆっくりと空気が抜ける場合もあり、気づくのが遅くなってしまうことがあります。トレッド面に異物が挟まっていた場合は、パンクしていないか念のため確認してください。
こまめな空気圧点検でタイヤの劣化を防ぐ
タイヤの空気圧は、パンクしていない状態でも、1ヵ月で5%程度※は自然に低下します。
そのため、乗用車の約25%※が空気圧不足で走行しているという調査結果もあります。
空気圧不足はタイヤの劣化を招きます。適切な空気圧を保つために、月に一度は必ず点検しましょう。
使用開始から5年以上経過したタイヤはタイヤ販売店等で要点検
タイヤはゴム製品のため、使用開始から時間が経つと劣化します。
日常的に使用すると日光や雨は避けられないため、経年劣化によってゴムは柔軟性を失い、次第に硬くなって、ひび割れなどの原因ともなります。
使用開始から5年以上経過したタイヤの場合は点検を受けて、問題がないか確認しましょう。
実は別のもの、パンクとバーストの違い
バーストの兆候、走行中に起きるスタンディングウェーブ現象
これらパンクの兆候を無視して走行し続けるとタイヤが劣化し、最悪の場合はバーストを引き起こします。上述した通り、空気圧不足はバーストの大きな原因のひとつです。
空気圧不足の状態で高速走行をすると、タイヤの側面が波打つように変形するスタンディングウェーブ現象が起こり、タイヤ全体が発熱します。発熱した状態で変形を続けると、タイヤは最終的に構造が致命的に破損し、トレッド部分が弾け飛んで、バーストしてしまいます。
高速走行中にバーストが発生すると、ハンドルやブレーキ操作が困難になり、重大な事故へとつながることも少なくありません。
どんなにささいなものであったとしても、パンクの兆候は見過ごさないようにしてください。
タイヤがパンクしたときの交換・修理方法
タイヤがパンクした時は無理に自分で交換をせず、タイヤ販売店等に対応してもらいましょう。
しかし、周囲にお店等がない、自力で走行できない状態である、ロードサービスの到着に時間がかかるといった場合は、以下の方法で対応可能です。
なお、いずれの方法を選択するにしても、すぐにタイヤ販売店等で点検または、交換するようにしてください。
1.予備のタイヤと交換する
万一の際の予備としてスペアタイヤをクルマに積んでいる場合は、パンクしたタイヤと交換すれば短距離なら走行可能です。
しかし、スペアタイヤはあくまで一時的な移動を助けるためのものです。通常のタイヤとは空気圧が異なり、トレッドパタンも常用には適していないため、そのまま使用し続けることはおすすめしません。
2.タイヤ修理剤を使用して修理する
タイヤ修理剤を注入することで、一時的にパンクの傷を塞ぎ、空気を充填しても漏れない状態にすることができます。
ただし、完全に傷を塞ぐことができるわけではありません。空気を充填しても長距離や高速での走行は避け、短時間の走行にとどめましょう。
3.タイヤパンクを処置した後は必ず整備を!
自分でパンクを処置した後は、必ず速やかにタイヤ販売店等で整備を受けましょう。その際には、アライメントや、パンクしていない他のタイヤに問題がないかなどといった点検も受けるようにしてください。専門家の目で確認してもらうことは、今後の安全運転にもつながります。
タイヤ交換の方法[緊急時編]
パンクなどのタイヤのトラブルはいつ発生するかわかりません。
車両に応急用のスペアタイヤが積まれている場合、パンクしたタイヤと交換することで、走行が可能になります。
最近では、スペアタイヤの代わりにその場で応急的にパンクして空いた穴を埋めることができるパンク修理キットを積んでいるクルマが増えていたり、パンクしたままでも規定の範囲(80km/h以下で80km以内)であればそのまま走れるランフラットタイヤを装着しているクルマもあります。
止むなく、その場でタイヤ交換する際は、安全な場所の確保と正しい手順を知ることが大切です。
いざ、パンクした時に慌てないためにも、実際のタイヤ交換方法の手順を理解しておきましょう。
また、スペアタイヤへの交換、パンク修理キットの使用、ランフラットタイヤでのパンク発生後は、速やかにタイヤ販売店に相談するようにするのも大切なポイントです。
STEP1. 周囲を確認しながら安全な場所に止めましょう
パンクが発生したら、周囲に注意しながら、クルマを安全な場所に止めましょう。
エンジンを切ったら、ハザードを点滅させたり、車載してある三角表示板を車両の後方に立てて、後続車に注意をうながします。
平らでないなど、安定しない場所では安全にタイヤ交換作業をすることができません。
また、交通量が多かったり、道幅が狭いなど、作業するのに危険な場合は無理に交換しようとしないで、ロードサービスを呼びましょう。
STEP2. スペアタイヤ、ジャッキやレンチ、輪止めを下ろす
車両に積んであるスペアタイヤを下ろします。
そのほか、車体を上げるためのジャッキや、ホイールを止めているナットを外したり締めたりするためのレンチ、輪止めも一緒に下ろしておきます。
これでスペアタイヤへの交換準備は完了です。
STEP3. 車体が動かないように輪止めをかける
AT車であればPレンジに入れ、MT車では1速に入れておきます。
さらにサイドブレーキがしっかりとかかっていることを確認したら、交換するタイヤとは対角線上にあるタイヤに輪止めをかけて、車体自体が動いてジャッキが外れたりすることを防止します。
たとえば右前のタイヤがパンクしたら、左後ろに輪止めをかけておきます。
しっかりと固定しておかないと、ボディが地面に落ちしてしまうだけでなく、ケガをしたり、場合によっては命にかかわることもあるので、確実な作業が大切です。
STEP4. ホイールナットを少しだけ緩める
アルミホイールであれば、どこにナットがあるのかはそのまま確認することできます。
スチールホイールでホイールキャップが付いている場合があります。
ホイールキャップを外さないと、ナットを緩めることはできません。
レンチの後ろ部分が平らになっているので、そこをホイールとキャップの間に入れて外しておきます。
ホイールを止めているナットを、ホイールレンチを使って反時計回りに力をかけて、すべて緩めます。
締まっていたのが軽く緩む程度で構いません。
強く締まっている場合は、レンチのできるだけ先端を持って体重をかけるようにすると緩みやすくなります。
STEP5. ジャッキを使ってボディを上げる
ボディの下にあるジャッキアップポイントを探して、そこにジャッキを当てます。
ジャッキアップポイントは凹みや三角の印が付いています。
ボディの縁の部分がジャッキアップポイントになっていて、この部分をジャッキの先端にある溝に合わせて固定します。
適当な所にジャッキをかけるのは危険なので、分からない場合は取扱説明書で確認しましょう。
ジャッキは事前に少し伸ばしておくとスムーズに作業が行えます。
ジャッキアップポイントにジャッキを確実に当てたら、タイヤが路面から少し浮き上がるまで持ち上げます。
タイヤが地面から少し浮く程度でいいので、高く上げ過ぎないようにしましょう。
高く上げ過ぎてしまうと、車体が不安定になり危険です。
十分注意してください。
STEP6. ナットを緩めてパンクしたタイヤを外す
軽く緩めてあったナットをすべて外して、パンクしたタイヤを取り外します。
順番は特に決まりはありませんが、一番上のナットを最後に外すと、作業中にタイヤが手前に倒れてくるのを防ぐことができます。
タイヤとホイールは重たいので、注意しながらしっかりと手で押さえて外して、地面に下ろします。
外したタイヤとホイールは車体の下に入れておくと、万一、ジャッキが外れたりした場合に、車体が落ちてしまうことを防ぐことができます。
STEP7. スペアタイヤを装着して、仮止めをする
事前にホイールナットがはまる位置を確認したら、スペアタイヤの向きを合わせて、車体に取り付けます。
タイヤを持つのは8時20分の場所で、下から支えるようにすると楽に行えます。
曲がったりしないように、しっかりと奥までホイールが入るようにします。
曲がったまま無理に装着すると、トラブルの原因になります。
確実にホイールを取り付けたら、ナットを時計回りに回して手で仮止めします。
ナットの内部にゴミやホコリが入っていないかを確認してから入れるようにしましょう。
軽く息を吹きかけてやるとより確実です。
最初に一番上のナットを入れると、外す時と同じように外れたり、手前に倒れてくることを防ぐことができます。
STEP8. ナットをガタがなくなるまで締め付ける
すべてのナットを仮止めしたら、レンチでホイールがガタつかなくなるまで時計回りに締め込みます。
1カ所をいきなり締めてしまうのではなく、それぞれのナットを均等に2回から3回に分けて順番に締めていきます。
締める順番については時計まわりなど、横ではなく、できるだけ対角線で行うと、確実に締めることができます。
STEP9. ジャッキを下ろしてナットの本締めをする
すべてのナットをガタがなくなるまで締め込んだら、ゆっくりとジャッキを下ろして、スペアタイヤを地面に着地させます。
完全にボディが下りて、ジャッキに力がかからなくなったら、取り外します。
レンチを使って、すべてのナットの本締めを行いますが、こちらも仮締めの時と同様に2回から3回に分けて対角線で均等に締めていきます。
輪止めを外します。
以上でタイヤ交換の作業自体は終了です。
STEP10. 交換が終了したら、注意しながら走行
スペアタイヤへの交換が済んだら、走行は可能になりますが、あくまでもスペアタイヤは応急用です。
振動や異音がないかなど、注意しながら走りましょう。
そして、すぐにタイヤ販売店などで点検、または新しいタイヤに交換するようにして下さい。
※スペアタイヤについての注意点
スペアタイヤはあくまでも応急用なので、タイヤ専門店などで、確実な修理を行ったり、新品に交換するようにしてください。
また、外したタイヤには適切な廃棄処理を行うために費用がかかります。
正しい方法で処理せず、不法投棄することは法律でも禁止されていますので、絶対に避けてください。
いざタイヤ交換という時慌てないよう、日頃の点検を!
スペアタイヤは一般的なタイヤと同じように、表面に亀裂やヒビが発生していないか、
また、空気圧は正しいかなど、定期的に点検するようにしましょう。
パンクをしていざタイヤ交換しようとしたら空気が抜けていたでは、使うことができません。スペアタイヤの状態が不安な場合は、お近くのタイヤ専門店で点検を行ってください。
また、ジャッキやレンチがどこに収納されているのかも、事前に確認しておくと、いざタイヤ交換する際に慌てずにすみます。
※タイヤ交換時の注意点
タイヤを交換する際は、正しい方法をしっかりと守って行ってください。間違った方法でのタイヤ交換は、作業時のトラブルや、走行時にトラブルが発生することがあります。
また、安全が確保できなかったり、作業に不明な点がある場合は、無理に自分で作業せず、JAFなどのロードサービスなどを利用してください。
スペアタイヤへの交換だけでなく、パンク修理キットでの修理、ランフラットタイヤでも、パンクが発生した後は、できるだけ速やかにお近くのタイヤ専門店にご相談ください。
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出典:2020/09/01 JAF(日本自動車連盟) JAFクルマ何でも用語辞典 スタンディングウェーブ現象
http://qa.jaf.or.jp/dictionary/details/196.html
※2
出典:2020/09/01 JAF(日本自動車連盟) トラブル対処法(私にもできるマイカー点検)
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/self-check/troubleshooting
こちらの情報は2022年1月現在のものです