タイヤには多くの種類があるため、どれを選べばよいか迷ってしまう人も多いでしょう。
タイヤは、クルマの「走る」「止まる」「曲がる」という基本性能すべてを担う、非常に重要な部品です。そのため、安全な走行を維持するには、地域の気候や路面状況、車種に適したタイヤを選ぶことが欠かせません。
また、乗り心地の向上や車内の静粛性を重視するなど、特定の性能にこだわるユーザー向けのタイヤも多く販売されています。
この記事では、タイヤの種類を6つの切り口から紹介したうえで、自分に合ったタイヤの選び方についても詳しく解説します。
【項目別】タイヤの種類
タイヤの種類は、以下の6つの項目で分けることができます。
- 構造
- 季節・気候
- 性能
- 車種
- 路面状況
- 特別な状況
自分の走行環境に合ったタイヤを選ぶことで、安全性や快適性が大きく向上します。
構造別

タイヤの構造には主に「ラジアル構造」と「バイアス構造」があります。主な違いは下表のとおりです。
ラジアル構造 | タイヤの中心に対し、カーカスが「放射状」に配置された構造 |
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バイアス構造 | タイヤの中心に対し、カーカスが「斜め」に配置された構造 |

ラジアル構造
ラジアル構造は、カーカス(タイヤの骨格を形成するコード層)が、タイヤの中心に対して放射状(ラジアル)に配置されていることが特徴です。
さらに、トレッド部にはベルトと呼ばれる補強帯が巻かれており、これによりタイヤ全体の剛性が高められています。
ラジアル構造のタイヤを「ラジアルタイヤ」といいます。操縦性、安定性、耐久性、燃費、乗り心地などに優れ、現在の乗用車用のタイヤとしては主流となっています。
バイアス構造
バイアス構造は、カーカス(タイヤの骨格を形成するコード層)が、タイヤの中心に対して斜め(バイアス)に配置されていることが特徴です。ブレーカ(補強帯)が入っているものと、入っていないものに大別されます。
バイアス構造のタイヤを「バイアスタイヤ」といいます。ラジアル構造が広く普及する以前は、こちらが一般的に使用されていました。
ラジアルタイヤの特徴やバイアスタイヤとの違いについて、詳しくは以下をご覧ください。

ラジアルタイヤとは?バイアスタイヤとの違いや特徴
ラジアルタイヤの特徴や、バイアスタイヤとの違いなどについて解説します。
季節・気候別
季節や気候によって道路状況は異なるため、適切なタイヤを選ぶことが重要です。ここでは、以下のタイヤを紹介します。
サマータイヤ (夏タイヤ・ノーマルタイヤ) |
通常の路面(乾いた路面や濡れた路面)での走行に適したタイヤ |
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スタッドレスタイヤ | 雪道や凍結路で滑らず、安全に走行するためのタイヤ |
オールシーズンタイヤ | サマータイヤの性能に加え、突然の雪道でも走行できる性能を持つタイヤ |

サマータイヤ(夏タイヤ・ノーマルタイヤ)
サマータイヤとは、乾いた路面や濡れた路面での走行に適したタイヤのことです。ほかに「夏タイヤ」や、新車時に装着されていることから「ノーマルタイヤ」とも呼ばれます。
夏専用のタイヤというわけではなく、乾燥した路面や濡れた路面であれば、年間を通して装着しても問題はありません。
スタッドレスタイヤ
スタッドレスタイヤは、雪道や凍結路を滑らずに安全に走行するためのタイヤです。
サマータイヤと比べて柔らかいゴムや、太くて深いミゾ、本数の多いサイプ(切り込み)などが特徴です。この構造により、凍結路面でのグリップ力や雪道での前に進む力が向上し、厳しい冬の路面条件下でも安定した走行が可能となります。
スタッドレスタイヤは雪の降る地域だけでなく、路面が凍結する可能性のある地域でも装着をおすすめします。凍結した路面は非常に滑りやすく、冬の路面を想定して設計されていないタイヤでの走行は危険です。

スタッドレスタイヤとノーマルタイヤの性能の違いとは
スタッドレスタイヤとノーマルタイヤの性能・特徴の違いや、適切な使い方を画像とともに紹介します。
オールシーズンタイヤ
オールシーズンタイヤとは、サマータイヤの性能に加え、突然の雪道でも走行できる性能を持つタイヤのことです。
その名称から、「どのような路面条件でも1年を通して使用できる」と思われる方も多いかもしれませんが、凍った路面ではサマータイヤと同様に滑りやすく、スタッドレスタイヤの代わりにはなりません。
お住まいの地域の気候や路面状況に合わせてタイヤを選びましょう。

スタッドレスタイヤの代わりにオールシーズンタイヤを使える?
凍結路での性能差をはじめ、それぞれのタイヤの特徴と違いをご紹介します。
性能別
性能別にタイヤを分類することもできます。用途や目的に応じて最適なものを選びましょう。ここでは、以下3つのタイヤを紹介します。
コンフォートタイヤ | 乗り心地の快適さや静粛性を重視したタイヤ |
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スポーツタイヤ | 運動性能を重視したタイヤ |
エコタイヤ(低燃費タイヤ) | JATMA(一般社団法人日本自動車タイヤ協会)のグレーディングシステムに基づき、一定以上の低燃費性能と安全性を満たしたタイヤ |

コンフォートタイヤ
コンフォートタイヤとは、乗り心地の快適さや静粛性を重視したタイヤのことです。制動時にフラットに接地するため、直進安定性に優れ、路面から伝わる振動や走行音を低減します。
以下のような車種や人には、コンフォートタイヤがおすすめです。
■コンフォートタイヤが適している車種
- セダン
セダンは居室が独立していることで静粛性が高い特徴があります。その静粛性の高さゆえに路面状況によってはロードノイズが気になることがあります。そのため、静粛性に優れたコンフォートタイヤがおすすめです。 - ミニバンやSUVなどの車高の高い車種
車高が高く、揺れや左右のふらつきが起こりやすいミニバンやSUVには、高荷重でもブレずに走行できるコンフォートタイヤが最適です。 - 軽自動車
軽自動車はタイヤが小さい分回転数が多く、摩耗しやすいため、操縦安定性が低下する傾向にあります。そのため、安定性の高いコンフォートタイヤがおすすめです。
■コンフォートタイヤがおすすめな方
- 車内で音楽や会話を楽しみたい方
- ふらつきや振動を抑えたい
また、ブリヂストンのコンフォートタイヤ「REGNO(レグノ)」ブランドは、ブリヂストン独自のサイレントテクノロジーを搭載し、より快適な車内空間を追求しています。
スポーツタイヤ
スポーツタイヤは、運動性能を重視したタイヤです。スポーツカー専用のタイヤというわけではなく、さまざまな車種に対応しています。グリップ力が高く、高速走行におけるコーナリングや急ブレーキの場面でも、高い性能を発揮します。
しかし、グリップ性能の高さゆえに、ハンドル操作に不安がある方には適しません。また、路面の凸凹による振動やロードノイズが大きい、乗り心地や燃費性能に劣る、摩耗しやすいといった注意点もあります。
スポーツタイヤは以下のような方に適しています。
■スポーツタイヤがおすすめな方
- スポーティーな走りを楽しみたい方
- サーキットなどで本格的なスポーツ走行を行う方
エコタイヤ(低燃費タイヤ)
エコタイヤ(低燃費タイヤ)とは、JATMA(一般社団法人日本自動車タイヤ協会)のグレーディングシステムにおいて、一定以上の低燃費性能と安全性を満たしたタイヤです。
低燃費性能としては「転がり抵抗性能」がA以上、安全性としては「ウェットグリップ性能」がd以上のタイヤのみがエコタイヤと認定されます。
転がり抵抗とは走行中にタイヤが損失するエネルギーであり、、この抵抗が少ないほど燃費が向上します。一方、ウェットグリップ性能は、濡路面が濡れた状態でのタイヤのグリップ力(制動時のグリップ力など)を示す指標です。
エコタイヤは燃費性能に優れている、環境にやさしい、長持ちするといったメリットがあります。
したがって、エコタイヤがおすすめな人は以下のとおりです。
■エコタイヤがおすすめな方
- 燃費が気になる方
- タイヤを長く安全に使いたい方
- サステナビリティを意識している方
なお、エコタイヤを選ぶ際は、普段走行する天候や走行シーンに応じたタイヤ選びが重要です。
転がり抵抗が低いほど燃費性能は向上しますが、その分路面との摩擦が減るため、グリップ力が低下する傾向にあります。
そのため、例えば雨天時に高速道路を運転する機会が多い方は、燃費性能だけでなく、ウェットグリップ性能も考慮して選びましょう。
車種別
クルマのボディタイプの特性に合わせて設計されたタイヤもあります。
SUV | 直進安定性、耐偏摩耗性能、オンロードでの静粛性を重視したタイヤ |
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ミニバン | 静粛性、直進安定性、低燃費性、耐偏摩耗性を重視したタイヤ |
軽自動車 | 耐偏摩耗性と静粛性を重視したタイヤ |

※それぞれの車種の専用タイヤというわけではありません。主にそのタイヤサイズが使用される車種で区分しています。そのため、サイズが合えばSUV・ミニバン・軽自動車以外の車で使用しても問題ありません。
SUV
SUVは普通自動車に比べて車高・重心が高く、重量もあります。そのため、カーブや高速道路でふらつきやすい、ノイズが発生しやすい、センター部分が偏摩耗しやすいです。
このようなSUV特有の課題に対応するため、SUV用タイヤは直進安定性や耐偏摩耗性能を高めるように設計されています。
また、オンロード向けのSUV用タイヤは静粛性を重視し、快適な走行をサポートします。一方、オフロード向けのタイヤは、泥道や砂利道などの悪路でも高い走破性を発揮できるのが特徴です。
重視する性能に合わせて、タイヤ選びをしましょう。
オンロード | オンロードでの走行に適したタイヤ |
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オン&オフロード | オンロードとオフロードの両方での走行に適したタイヤ |
オフロード | よりオフロードでの走行性能を向上させたタイヤ(オンロードでの走行も可) |

ミニバン
ミニバンは車体が大きく、乗車定員が6~8人と多く、大きな荷物も載せやすい車種です。
一方で、タイヤに負荷がかかりやすくノイズも大きくなりやすい特徴があります。また、車高や重心が高いため、普通自動車に比べてふらつきやすく、コーナリングやブレーキング時には強い力がタイヤにかかり、偏摩耗が起こりやすい点も課題です。
これらの特性を考慮し、ミニバン用タイヤは静粛性、直進安定性、耐偏摩耗性を重視して設計されています。
軽自動車
軽自動車は普通自動車に比べてタイヤが小さく、その分タイヤの回転数が多くなるため、摩耗しやすい傾向があります。また、小回りがきくため、据え切りによる偏摩耗が発生しやすく、走行時のノイズや振動が目立つのも課題です。
これらを踏まえて、軽自動車用タイヤは、耐偏摩耗性と静粛性を重視して設計されています。
路面状況別
路面状況に対応するタイヤには「オフロードタイヤ」というものがあります。
オフロードダイヤは、山の中や泥道といったオフロードでの走行を目的としているため、駆動力とハンドリング性に優れています。また、ゴツゴツとしたワイルドな見た目も特徴です。
オフロードタイヤには4つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。車種や用途、好みに合わせて選びましょう。
オールテレーン(A/T) | あらゆる地形に対応できるタイヤ |
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マッドテレーン(M/T) | オフロードでの走行性能をより高めたタイヤ |
ハイウェイテレーン(H/T) | オールテレーン(A/T)のオンロードでの走行性能をより高めたタイヤ |
ラギッドテレーン(R/T) | オールテレーン(A/T)とマッドテレーン(M/T)の中間に位置するタイヤ |

オフロードタイヤ:オールテレーン(A/T)
オールテレーン(A/T)は、あらゆる地形に対応できるように設計されたタイヤです。
舗装されたオンロード、山の中や泥道といったオフロードに加え、雪道も走行できます。ただし、オールテレーンタイヤは過酷な積雪や凍結路には適していません。
また、スタッドレスタイヤの代わりにはならない点には注意が必要です。
オフロードタイヤ:マッドテレーン(M/T)
マッドテレーン(M/T)は、オフロードでの走行性能をより高めたタイヤです。山の中、ぬかるんだ泥道、砂利道などの悪路でも安定した走行を可能にします。
オフロードタイヤ:ハイウェイテレーン(H/T)
ハイウェイテレーン(H/T)は、あらゆる地形に対応するオールテレーン(A/T)の、オンロードでの走行性能をより高めたタイヤです。
オフロード走行に加え、舗装された道路での乗り心地や静粛性などの快適性能や低燃費性能が優れています。
オフロードタイヤ:ラギッドテレーン(R/T)
ラギッドテレーン(R/T)は、オールテレーン(A/T)とマッドテレーン(M/T)の性能の中間に位置するタイヤです。
オフロード走行においては、オールテレーン(A/T)よりも優れた性能を発揮します。
その他特殊なタイヤ
ランフラットタイヤ | 空気圧がゼロになっても所定のスピードで一定の距離を走行できるタイヤ |
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応急スペアタイヤ (テンポラリータイヤ・テンパータイヤ) |
緊急時に備え、トランクや車体下に装備されている予備のタイヤ |
シーリングタイヤ | 穴が開いてしまっても、内側に塗布されたシーリング剤が穴を自動的に塞いでくれるタイヤ |

ランフラットタイヤ
ランフラットタイヤとは、空気圧がゼロになっても所定のスピードで一定の距離を走行できるタイヤのことです。
走行中に釘やガラスなどを踏んでパンクしてしまっても、一定の距離を走行できるため、安全な場所まで車を移動することができます。そのため、パンク時の不安を軽減し、二次災害を回避できるのがメリットです。
パンク時の対応に不安がある方や、万が一に備えたい方、高速道路を走行する機会の多い方におすすめです。
また、スペアタイヤを積む必要がないため、トランク内のスペースを十分に活用したい方にも適しています。
応急スペアタイヤ(テンポラリータイヤ・テンパータイヤ)
応急スペアタイヤ(テンポラリータイヤ・テンパータイヤ)は、パンクなどの緊急時に備え、トランクや車体下に装備されている予備のタイヤです。
応急的に使用することを目的としているため、標準装着タイヤと比べると幅と接地面積が小さいという特徴があります。
そのため、使用時には最高速度や装着位置に制限があり、長距離走行には適していません。あくまでも、パンク修理やタイヤ交換を行うまでの間、安全に車を走行させることが目的です。
シーリングタイヤ
シーリングタイヤとは、タイヤに釘が刺さって穴が開いてしまっても、タイヤ内側に塗布されたシーリング材が穴を自動的に塞いでくれるタイヤです。
タイヤの穴を素早く封じ、空気漏れを防ぐことで、修理や交換を行うまでの移動をサポートします。ただし、シーリング材の効果は一時的であり、早急に修理または交換が必要です。
最適なタイヤの種類はどれ?迷ったときのポイント
タイヤ選びは車の安全性や走行性能に直結する重要な要素です。ここでは、タイヤ選びの基準や、迷ったときに押さえておくべきポイントを詳しく解説します。
ご自身が重視する性能を基準に選ぶ
タイヤを選ぶ際は、走行する地域の天候や路面の状態、車種に加えて、運転者や同乗者が重視する性能を基準にすると良いでしょう。
例えば、降雪地域や路面が凍結する地域ではスタッドレスタイヤが適しています。また、山道などのオフロード走行をするのであれば、オフロードタイヤがおすすめです。燃費が気になる方や、タイヤを長く安全に使いたい方はエコタイヤを推奨します。
ご自身のカーライフに合わせてタイヤを選ぶことで、快適で安全な走行が可能になります。
プロに相談する
タイヤの種類は多いので、どのタイヤを選ぶべきか悩む人は少なくありません。
そのため、タイヤ選びで迷ったときは、タイヤのプロに相談することをおすすめします。タイヤのプロに相談すれば、お客様のカーライフの情報をもとに、最適なタイヤを提案してくれるでしょう。
ブリヂストンでは、オンライン相談または店舗にて、経験豊富なスタッフが、お客様一人ひとりのご要望に応じたタイヤ選びをサポートしています。オンラインストアでは、「車種」「サイズ」「ブランド」の3つの検索方法を用意しており、お客様に適したタイヤを簡単に探すことができます。
まとめ
タイヤは、車の部品のうち、唯一地面と接する車の部品であり、「走る」「曲がる」「止まる」という車の基本性能をすべて左右する重要な役割を担っています。
そのため、安全で快適なドライブのためには、走行する環境や車種に応じて適切なタイヤを選ぶことが重要です。
また、快適さや静粛性、燃費性能、運動性能など、運転者や同乗者が重視する性能に合わせて選ぶことも良いでしょう。
タイヤ選びに迷った際は、ブリヂストンのオンライン相談・来店相談をご利用ください。オンラインストアからも、「車種」「サイズ」「ブランド」の3つの検索方法で、お客様に適したタイヤを簡単に探すことができます。