現在、私たちが目にする自動車のタイヤには、当たり前のようにゴムが使われています。
しかし、タイヤの歴史を振り返ると、はじめからゴムが用いられていたわけではありません。かつては木材や金属を用いた車輪が主流で、そこから自動車性能の発展や道路網の整備といった環境変化に合わせて、タイヤも進化してきました。
衝撃を吸収する柔軟性、空気を保持する気密性、路面をしっかり掴むグリップ力などの特性が、ゴムがタイヤに採用されている主な理由です。この記事では、タイヤにゴムが使われるようになった理由や、ゴムの種類などについて解説します。
タイヤにゴムが使われている理由
タイヤにゴムが使われている背景には、技術や道路網の発展があります。
「モノや人を運ぶための車輪」をタイヤと定義すると、初期のタイヤは木材や金属を用いた車輪が用いられていました。
1800年代中盤になると、車輪の外側にゴムを巻き付けたソリッドタイヤが誕生しました。しかし当時のタイヤは最高速度が30km/h程度で、長時間の走行ではゴムが熱で焦げ、煙を上げることもあったといいます。
その後に登場した空気入りタイヤは、フランスで開催された耐久レースで自動車に初めて採用されると、パンクを繰り返しながらも、最高速度は61km/hに達しました。
空気入りタイヤの普及がさらに進むと、金属のワイヤーで補強したり、配合剤を改良したりすることで、タイヤは耐久性や走行性能を大きく高めていきます。
こうした歴史の積み重ねを経て、現在のゴムを用いた空気入りタイヤが形作られました。現在も進化を続けるタイヤにおいて、ゴムが使われ続けている理由を詳しく見ていきましょう。
※出典元:タイヤの歴史 | タイヤとユーザー | 一般社団法人 日本自動車タイヤ協会 JATMA
【1】ゴムは地面からの衝撃を和らげる
ゴムは、木材や金属とは違って伸縮性があり変形が可能な素材です。この性質により、路面の凹凸や段差によって生じる衝撃を吸収してくれます。
走行中や段差を乗り越える際の振動が抑えられることで、乗り心地が向上するだけでなく、車体への負担軽減にも貢献します。
【2】ゴムは空気や水を通しにくい
空気入りタイヤは、適切な空気圧が充填されて初めて本来の性能を発揮します。そのため、内部の空気をしっかり保持できる素材が必要です。
ゴムは空気を通しにくく、タイヤ内部の空気を長時間保ちます。また、雨や雪による水分を通しにくいため、タイヤ内部への浸水を防ぎ、構造の劣化を抑える効果も期待できます。
この気密性と耐水性が、タイヤの性能維持に大きく貢献しているのです。
【3】ゴムは摩擦が大きく滑りにくい
自動車がドライバーの意思通りに加速や減速を行うには、エンジンやモーターからタイヤに届ける動力を速やかに路面に伝える摩擦力が必要です。この摩擦力を生み出すのに、ゴムの性質が大きく役立っています。
イメージしやすい例として、革底の靴とゴム底の靴を比べてみましょう。革底は表面がツルツルとしており、凍った路面では意思に反して滑ってしまうため、前に進んだり止まったりすることは困難です。
一方、ゴム底の靴は路面の凹凸に密着しやすく、グリップが効くため、凍った路面でも自分の意思どおりに歩きやすくなります。
ゴムの摩擦力があることで、雨や雪の路面でもしっかり路面を掴み、車両を安全に進めたり止めたりすることが可能になるのです。
タイヤに使われているゴムの素材
タイヤに使われるゴムは、大きく「天然ゴム」と「合成ゴム」の2種類に分けられます。
それぞれに異なる特性があり、素材の特性に応じて、タイヤの各部に最適なゴムが使い分けられています。
それぞれの特徴を、より詳しく見ていきましょう。
天然ゴム
天然ゴムは植物由来のゴムで、ゴムの木から採取される樹液を加工して作られます。合成ゴムと比べて、引張りや引裂きに対する強度に優れている点が特徴です。
パラゴムノキの樹液を固めて燻製にしたシート状のものや、ドライヤーで乾燥させたブロック状のものなど、加工方法によってさまざまな形態があります。
| 天然ゴム(NR) | 天然ゴム(NR) |
|---|---|
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合成ゴム
合成ゴムは石油を原料に人工的に作られるゴムです。強度では天然ゴムに及びませんが、人工的に作られるため、目的に応じた特性を持たせやすい素材となっています。
そのため、タイヤにおいては低燃費性や耐寒性、耐摩耗性など、求められる性能をバランスよく付与することが可能です。
| スチレンブタジエンゴム(SBR) | ブタジエンゴム(BR) |
|---|---|
|
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| イソプレンゴム(IR) | ブチルゴム(IIR) |
|
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タイヤに使われるゴムに関してよくある質問
ここでは、タイヤに使われるゴムに関する、よくある質問に回答します。タイヤ選びやメンテナンスの参考にしてください。
タイヤのゴムはなぜ黒い?
タイヤのゴムは、一般的に輪ゴムなどでイメージされる飴色のゴムとは異なり、黒色をしています。その理由は、「カーボンブラック」という炭素からできた素材が配合されているためです。
カーボンブラックは、印刷インキやマスカラなどの黒色の着色剤としても使われますが、タイヤの場合は単なる色付けではありません。耐久性を高める補強材として重要な役割を果たしています。
タイヤは車の重さを支え、エンジンの力を路面へ伝え、さらに路面からの衝撃を受け続けるため、十分な強度が必要です。カーボンブラックを配合することで、ゴムが補強され、タイヤの耐久性と安全性が飛躍的に高められます。
何年で劣化する?
ゴムの性質上、時間が経つにつれて硬くなり、柔軟性を失っていきます。ゴムが硬くなるとタイヤが路面を掴む力が低下し、ブレーキやハンドリングに影響が出る可能性があります。
タイヤの製造からの経過年数は、安全性を保つうえで重要な目安です。具体的には、製造から5年を過ぎたタイヤは、一度タイヤ専門店で点検を受けることをおすすめします。
また、製造から10年が経過したタイヤは、使用状況にかかわらず新品への交換をご検討ください。

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持続可能な社会の実現と安全性の向上に向けて|ブリヂストンの技術革新
タイヤは誕生以来、素材や構造の改良を重ねてきました。
耐久性・安全性・快適性の向上を追求するなかで、木材や金属を使った車輪から、ゴムを巻き付けたソリッドタイヤ、そして空気入りのゴムタイヤへと進化してきたのです。
現在も、環境への配慮や安全性能のさらなる向上を目指して、ゴムの技術革新は続いています。
その代表的な例が、ブリヂストンのスタッドレスタイヤに採用されている独自技術「発泡ゴム」です。
発泡ゴムは、ゴム内部に無数の気泡と水路を形成することで、凍結路でのグリップ力を高めています。
凍った路面では表面に水の膜が生じやすく、これがタイヤが滑る原因となります。
そこでブリヂストンは、この水の膜をいかに効率よく取り除くかに着目しました。
発泡ゴムは、スポンジのように水の膜を吸収・排出し、タイヤと路面の密着性を高めることで、滑りやすい路面でも安定した走行性能を実現しています。
この技術が生まれた背景には、スパイクタイヤの粉塵問題による使用禁止と、それに伴う新たな冬用タイヤの需要があります。
ブリヂストンでは、以前はタイヤ内の「破壊核」となり得る気泡を排除する製造技術を磨いてきましたが、発泡ゴムではその発想を転換しました。あえて気泡を取り入れ、その気泡をコントロールするという真逆の挑戦を行うことで、凍結路における高い性能を引き出すことに成功したのです。

スタッドレスタイヤの「発泡ゴム」
ブリヂストン独自技術「発泡ゴム」は、タイヤが凍った路面にしっかりと密着し、優れたグリップ力を発揮します。
まとめ
タイヤにゴムが使われている理由は、衝撃吸収性、気密性、グリップ力といったゴムならではの優れた特性にあります。
木材や金属の車輪から始まり、ソリッドタイヤ、そして空気入りタイヤへと進化を遂げる中で、ゴムはタイヤに欠かせない素材として定着しました。現在でも、天然ゴムと合成ゴムの特性を活かしながら、タイヤ技術は進化を続けています。
ブリヂストンは、凍結路に強い「発泡ゴム」の開発など、ドライバーの安全と安心を思い描きながらタイヤづくりに取り組んできました。タイヤ選びに迷った際は、ぜひブリヂストンのお店を活用して、自分の走行スタイルに合ったタイヤを選んでみてください。

















