Motor Sports / Time Attack > TOYOTA GR86/BRZ Race 2024 Report > プロフェッショナルシリーズ激闘の2024年を振り返る
Vol.07
2024年のTOYOTA GR 86/BRZ RACEが熱戦の幕を閉じました。今年も多くの名場面が生まれ、ファンを魅了した一年となりました。
開幕戦のSUGOでは、昨シーズンのチャンピオンである#1 井口卓人選手がPOTENZA RE-09Dを装着し、最終ラップの最終コーナーで劇的な逆転勝利を収めました。この勝利は、白熱した2024年シーズンのチャンピオン争いを予感させるものでした。
第5戦の十勝から投入された新タイヤPOTENZA RE-10Dは、接地性を追求し、DRY/WET性能をさらに高次元で両立したモデル。この進化により、ライバルとのバトルはさらに熾烈さを増し、ドライバーはその性能を最大限に引き出して接戦を繰り広げました。
シリーズタイトルの獲得には届かなかったものの、POTENZAドライバーたちは全国のサーキットで存在感を示しました。各地のサーキットでのオーバーテイクの数々は、観客を魅了し続けました。
今回は、プロフェッショナルシリーズに参戦したPOTENZAドライバー9名に、2024年シーズンの振り返りと彼らが感じた手応え、来シーズンへ向けての抱負を伺いました。それぞれドライバーの視点から語られる熱戦の裏側に迫ります。
カーナンバー「1」を背負い、2023シーズンを戦い抜いたディフェンディングチャンピオン井口選手。昨シーズンの王者として挑むプレッシャーを感じながらも、終始謙虚な姿勢を貫き、結果としてシリーズランキング2位という成績を残しました。
「昨シーズンは、すべてがうまくいきすぎたシーズンでした。もちろん、チーム全員の努力が実ったからこそのタイトルでしたが、このGR86/BRZ Cupは本当に簡単に勝てるレースではないので、運も大きかったのだと思います。今シーズンも開幕戦での勝利を含め、序盤ではポイントを獲得できましたが、その後はマシンの不調などもあり、思うようなパフォーマンスを発揮することができませんでした。それでも序盤に安定してポイントを重ねられたことで、シリーズランキング2位という結果につながったと思いますので、その点には満足しています」
モータースポーツにおいて「運も実力のうち」と言われるなかで、井口選手の冷静な自己分析と、チーム全体を鼓舞する姿勢は、GR86/BRZ Cupにおける新たな「ドライバー像」を体現してくれたと言えるでしょう。
Rd.01 | Rd.02 | Rd.03 | Rd.04 | Rd.05 | Rd.06 | Rd.07 | Rd.08 |
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20 位(4) | 6 位(8) | 4 位(5) | 2 位(2) | 5 位(6) | - - | 31 位(14) | - 位(13) |
20 p | 6 p | 11 p | 16 p | 8 p | - p | 0 p | 0 p |
シリーズランキング 2位 61p | |||||||
()内は予選の順位です。 |
プライベーターとして、前身の86/BRZ Raceの開幕以来、10年以上にわたって国内屈指のプロドライバーに挑み続けている井上選手。
「観客や他の選手からは、毎戦同じような位置で戦っているように見えるかもしれませんが、強敵たちと競り合いながらポイントを獲得したいという気持ちは変わりません。POTENZAの優れたトラクション性能を活かし、練習走行、予選、決勝を通じてプロたちとのタイム差を少しずつ縮めることができています。継続が力になると信じて戦い続けています」
プロドライバーたちは、レースウィーク中に驚くべきペースでタイムを更新していきます。そんな厳しい環境の中で、そのペースに食らいついていく井上選手の走りは、もはやプライベーターの枠を超えていると言えるでしょう。
Rd.01 | Rd.02 | Rd.03 | Rd.04 | Rd.05 | Rd.06 | Rd.07 | Rd.08 |
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19 位(24) | 18 位(26) | 26 位(29) | 24 位(23) | 20 位(27) | 25 位(26) | 24 位(26) | 28 位(34) |
()内は予選の順位です。 |
自他ともに認める速さを持つPOTENZAの新エースドライバー堤選手。オートポリスで開催された第2戦では、オープニングラップで6番グリッドから一気に2番手へ浮上。その圧巻のペースと果敢なドライビングは、多くの観客を熱狂させました。
「厳しい戦いの中でも全力で挑み、シリーズ上位に食い込むことができました。安定感を示せたことは大きな収穫ですし、タイヤが変わっても一貫したパフォーマンスを発揮できたことには満足しています。POTENZAのポテンシャルは一定の水準で証明できたと思いますが、ブレーキやタイヤの開発においていくつかの改善点も見えてきました。これらを精査しながら、さらに良い結果を目指して改善に取り組んでいきたいと思います」
どのようなコンディションであっても、常に最善の走りで結果を残してきた堤選手。そのパフォーマンスに裏打ちされた信頼感と、開発における手腕にますます期待が寄せられます。
Rd.01 | Rd.02 | Rd.03 | Rd.04 | Rd.05 | Rd.06 | Rd.07 | Rd.08 |
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21 位(27) | 2 位(6) | 5 位(6) | 10 位(11) | 3 位(4) | 16 位(14) | 3 位(3) | 6 位(6) |
1 p | 15 p | 8 p | 1 p | 12 p | 0 p | 12 p | 6 p |
シリーズランキング 4位 55p | |||||||
()内は予選の順位です。 |
今シーズンも、高い次元の走りで数多くのオーバーテイクを披露してくれた中山選手。抜きどころが少ないSUGOや岡山では、彼のフェアかつアグレッシブな走りが観客を熱くしてくれました。
「シーズンを通して振り返ると、全体としては、安定したパフォーマンスを発揮できていたと思います。最終戦は最後の最後で凜太郎選手に抜かされてしまいましたけど…。中盤でタイヤがRE-10Dに変わりましたが、NEW POTENZAの特性をうまく捉え、比較的スムーズにアジャストできたと思います。全戦をしっかりと戦えたことで、見えてきた課題もあります。来シーズンは、POTENZAとともにさらに進化した走りを見せられればと思います」
昨年に引き続きフル参戦を果たした中山選手。適応が進んでいるだけに来季のパフォーマンスに期待が膨らみます。
Rd.01 | Rd.02 | Rd.03 | Rd.04 | Rd.05 | Rd.06 | Rd.07 | Rd.08 |
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4 位(8) | 11 位(16) | 15 位(14) | 3 位(3) | 2 位(3) | 5 位(9) | 7 位(8) | 8 位(9) |
10 p | 0 p | 0 p | 12 p | 15 p | 8 p | 4 p | 4 p |
シリーズランキング 5位 53p | |||||||
()内は予選の順位です。 |
常に安定した高い走行性能を発揮するPOTENZAタイヤの開発ドライバー、佐々木選手。今シーズンも、より高い次元の走りを可能にするRE-10Dを開発し、GR86/BRZ Cupを大いに盛り上げました。
「装着率や、安定した走行性能という点では、RE-10Dは一定の成功を収めたと言えるかもしれません。しかし、やはり僕自身が走りの面でリーダーシップを発揮し、速さでチームをさらに引っ張っていける存在であるべきだと痛感しています。ここ数年はマシンの不調を克服できず、これまでのようにコンスタントに表彰台や優勝を飾ることが難しい状況が続いています。本来あるべき位置でレースを戦うためにも、来季に向けては外部のエンジニアを招聘するなど、大きな変化が必要になるかもしれません」
開発ドライバーとしての使命感と、エースとしての責任を強く感じさせる佐々木選手の言葉。その覚悟には並々ならぬ決意が宿っています。来季、佐々木選手の復活とさらなる飛躍に期待が高まります。
Rd.01 | Rd.02 | Rd.03 | Rd.04 | Rd.05 | Rd.06 | Rd.07 | Rd.08 |
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10 位(12) | 12 位(14) | 13 位(22) | - 位(19) | 11 位(18) | 29 位(24) | 18 位(19) | 25 位(29) |
1 p | 0 p | 0 p | 0 p | 0 p | 0 p | 0 p | 0 p |
シリーズランキング 19位 1p | |||||||
()内は予選の順位です。 |
栃木トヨタの社員ドライバーとして、プロとの真剣勝負に挑む鶴賀選手。シミュレーターとリアル走行を融合させる次世代のアプローチで、今シーズンもGR86/BRZレースに参戦しました。
「今年1年は、これまでの考え方をすべて見直すことをテーマに取り組んできました。車両の開発面ではチームとともに試行錯誤を重ねる一方で、僕自身もドライビングスタイルを大きく変える挑戦の年となりました。特に、タイヤの性能を最大限に発揮するためには、滑りやアンダーステアを最小限に抑え、理想的なラインでタイヤの回転方向を意識した走行が求められます。この点については、まだ改善の余地があると感じています。POTENZAは非常に高いグリップ力を持っていますが、そのグリップ感に頼りすぎることなく、最適なポイントで性能を引き出すことが重要です。この難しさと向き合いながら、理想的な走りを追求した1年でした」
クラブマンクラスのチャンピオンとしてプロフェッショナルシリーズに挑み続ける鶴賀選手。これまでのセッティングやドライビングをさらに進化させ、次なる高みを目指します。
Rd.01 | Rd.02 | Rd.03 | Rd.04 | Rd.05 | Rd.06 | Rd.07 | Rd.08 |
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18 位(21) | 21 位(27) | - 位(21) | 17 位(8) | 16 位(22) | 18 位(19) | 21 位(23) | 27 位(24) |
()内は予選の順位です。 |
BRZドライバーとして2020年にチャンピオンを獲得している久保選手。今シーズンも、井口選手との「あうんの呼吸」でチームに安定してポイントをもたらしました。
「前半戦は本当に苦戦しました。シーズン後半は、予選では10番前後のポジションからスタートして決勝で追い上げてポイントを取るというのが僕のスタイルになっていましたね。新しいRE-10Dタイヤに関しては、正直その性能を最大限に活かしきれなかったと感じています。グリップの捉え方や使い方をもっと上手くアジャストできれば、さらに良い結果につながったと思います。シーズンを通して、井口くんが好調だった前半戦では僕が苦戦する場面が多く、後半、井口くんが苦しい時には僕がポイントを取れるようになり、チームとして良いバランスを発揮できたと感じています」
決勝では、POTENZAのロング性能を存分に引き出し、白熱したバトルで観衆を魅了してくれた久保選手。来季は、さらにアグレッシブで進化したBRZの走りを見せてくれそうです。
Rd.01 | Rd.02 | Rd.03 | Rd.04 | Rd.05 | Rd.06 | Rd.07 | Rd.08 |
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11 位(14) | - 位(21) | 10 位(24) | 19 位(25) | 19 位(17) | 11 位(16) | 6 位(11) | 7 位(12) |
0 p | 0 p | 1 p | 0 p | 0 p | 0 p | 6 p | 4 p |
シリーズランキング 16位 11p | |||||||
()内は予選の順位です。 |
GR86/BRZ Cupでも、着実に向上するチームの地力とともにGT300同様の好調な走りを見せた蒲生選手。ニュータイヤRE-10Dが投入された十勝での占有走行では、難しいウェットコンディションの中でトップタイムを記録し、その天性の速さで周囲を圧倒しました。
「ネッツ兵庫の自社チームとして3年目を迎え、ようやく結果が形になりつつあります。クルマへの理解度も増し、車両そのものも非常に速くなってきました。シーズン中盤でタイヤがRE-10Dに変わりましたが、タイヤに荷重をかけるタイミングなどは違和感なくこなせましたし、ある程度速く走れるベースのセッティングを見つけることができたのが、安定してポイントを取れた要因だと思います。これまでのシーズンよりもコンスタントにポイントを獲得し、上位でレースを進めることができたので、上り調子の良いシーズンだったと思います」
圧倒的なドライビングセンスを持つ蒲生選手は、体に染み付いたPOTENZAのフィーリングを最大限に活かし、来季もさらなる高次元の走りを見せてくれるでしょう。
Rd.01 | Rd.02 | Rd.03 | Rd.04 | Rd.05 | Rd.06 | Rd.07 | Rd.08 |
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5 位(5) | 4 位(7) | - | - | 6 位(9) | 6 位(10) | 2 位(2) | 11 位(22) |
8 p | 10 p | 0 p | 0 p | 6 p | 6 p | 15 p | 0 p |
シリーズランキング 7位 45p | |||||||
()内は予選の順位です。 |
今シーズン、自ら新チームを立ち上げて参戦した吉田選手。岡山での見事なオーバーテイクショーは、チームへの彼の責任感の表れと言えるでしょう。
「1年間を通して、表彰台に上がれた岡山のような良いレースもあれば、鈴鹿のようにただ出るだけで精一杯のレースもありましたね。昨年は常にトップ争いができていたのですが、今年は波が大きく、厳しいシーズンになりました。POTENZAのロングランの強さは活かせたと思いますが、予選で前に行けないと戦うのが難しいということをあらためて痛感した1年でした。新しい試みとして、GR Garage熊本中央からメカニックを迎え、GRガレージ浦和美園とお互いにスキルを共有しながら成長できたことは、大きな成果だと感じています。彼らの努力が良い結果に繋がったと言えるように、来季はもっと頑張りたいと思います」
モータースポーツの裾野を広げるプロドライバーとして活躍の場を広げる吉田選手。彼のGR86/BRZ Cupへの情熱は、来季の走りをさらに熱くしてくれるでしょう。
Rd.01 | Rd.02 | Rd.03 | Rd.04 | Rd.05 | Rd.06 | Rd.07 | Rd.08 |
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8 位(9) | 13 位(13) | 6 位(9) | 5 位(6) | 13 位(16) | 2 位(8) | 15 位(16) | 10 位(11) |
3p | 0p | 6p | 8 p | 0 p | 16p | 0p | 1p |
シリーズランキング 9位 34p | |||||||
()内は予選の順位です。 |
元86/BRZレーサー(実は2013年初代ポールシッター)。
2024年BMW&MINI Racingレースディレクター。
今シーズンは、2年ぶりにS耐に復帰。
新菱レーシングの#7新菱オートVARIS☆DXL☆EVO10をドライブ。