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Formula Drift JAPAN 2023 Report
Rd.4 SPORTSLAND SUGO 7/22~23/2023
草場佑介の走りを支える
エンジンビルダー・富田雅也
「CUSCO Racing GR86は最高のドリフトマシン」だと草場佑介選手は言う。
1000ps近いパワーが連続して求められる過酷な状況でも、エンジンにトラブルがないからこそ、安心して走りに集中できると草場選手。その心臓部である2Jエンジンを作り上げているのがメカニック富田雅也だ。草場選手が絶大な信頼を寄せる富田メカとは。
ハイパワーをいかに幅広い回転域で使えるかが
現代ドリフトに求められる必須の条件
ドリフト創成期にはリアタイヤのグリップを落として滑りやすくして走ることが一般的だった。
その流れはドリフト競技に引き継がれ、グリップが戻らないように、とにかく長い距離のドリフトを続けるスタイルが評価された時代があった。
それから20年近い年月を経て、ドリフトは大きく変わってきた。グリップを高め、より速くより深い角度でのドリフトが求められるようになってきたのだ。
しかし、そこで問題になるのがドリフトの維持。グリップが高いタイヤほど、ドリフト状態からグリップが回復する、いわゆる「戻りやすい」状態になってしまう。
ハイグリップタイヤで、速く、深いドリフトを実現したい。されど戻りたくない。エンジンのパワーアップは必然だった。
ドリフトが戻りそうになったらエンジンパワーを上げてグリップを回復させないで、強引にドリフトを維持していく。それを可能にしたのがハイパワーなエンジンだ。
その結果、ドリフト競技ではハイパワー化が著しい。400psや500psでトップ勢が競っていたのは10年以上前で、現在は1000psや1200psも珍しくない。
CUSCO Racingのエンジンビルダー・富田雅也
とにかくパワーを出したい。そこで日産スカイラインGT-Rに使われた名機RB26DETTや、R35GT-RのVR38DETT、そしてトヨタスープラなどに使われる2J、その弟分的な存在でチェイサーやマークⅡに使われた1Jなどがベースエンジンに使われるようになった。
なかでも現在圧倒的な支持を得ているのがトヨタの1J/2Jエンジンで、1Jは2500cc、2Jは3000ccでどちらも鋳鉄ブロックによるタフさが魅力。登場から数十年が経過しているが排気量の大きさからトルクにも優れ、ドリフトでは現在も主流となっている。
CUSCO GR86のエンジンを組み上げるのは、メカニック・富田雅也だ。愛知県でファクトリーBASEというチューニングショップを経営、ドリフト車両の製作をメインに、スーパー耐久シリーズにメカニックとして長年参加するなどコンペティションな場での活躍も久しい。そして自らもドリフト競技に参戦する。自身で走り、エンジンを製作し、セッティングまでできる若手チューナーとして知られている。
CUSCO Racingでは、4台全車のエンジン製作を担当し、いずれも2Jにギャレットのタービンを組み合わせ、800〜1000psを発揮させている。
「できるだけパワーは出したい。ドライバーがそれで乗りやすくなるのなら少しでも良くなるように細かいところまで気をつけて仕様を決めて組んでいます。そのため、実は各車で少しづつ仕様が異なる部分があります」と富田メカニック。
ドリフトでなにより怖いエンジントラブル
「例えば足まわりでタイロッドが折れた場合は、5分間ルール内で交換できます。それを想定して交換しやすいように設計しています。ところがエンジンだとわずかな時間ではどうにもならないことがほとんどです。とくにエンジン本体にトラブルが起きた時は即リタイヤになってしまう。それだけは避けたい。トラブルもありますが、エンジンが派手にブローしてしまうと組んだ僕のミスなのか、パーツの許容限界だったのかもわからなくなってしまう。そうなると結局どんどん悩んでしまう・・・。エンジンビルダーの宿命ですかね」と富田氏。そんなプレッシャーを感じつつ4台のエンジンを組んでいる。
今シーズンはここまで4台のすべてとエビスラウンドで優勝したロバンペラ選手のGRカローラまで含めて、すべての車両がノートラブルで走り切っている。
トラブルフリーだからこそ踏み切れる
草場佑介は富田が組むエンジンに絶大な信頼を寄せる。
「正直自分がプライベーターで競技に参戦しているときは、エンジンに対する不安が常にありました。壊れたら仕方ないと思いながら踏むしかなかった。ところが今は違います。まったくトラブルがないので、競技に集中できます」
競技は春から秋がメイン。エビス、SUGOと暑い中での競技が続き、次戦奥伊吹も8月の猛暑の中で行われる。
「今回のSUGOはとくにエンジンにはきついコースだと思います。高回転で連続してアクセルを踏んでいくコース。エンジンには相当負担を掛けていると思います。しかも、めちゃくちゃ暑い。トーナメントでは2本走って、ワンモアタイムになったら、さらに連続して2本走行。これも厳しい状況だと思います。でも、まったく不安がありません。こんなコンディションでも安心して踏んでいけるエンジンには感謝しかありません」と草場選手は富田のエンジンが自身の走りを支えてくれていると言う。
「ドリフト競技はパワーがあって、ストレートスピードがあれば勝てるわけではないので、いわゆるレースとはちょっと異なる部分があります。でも、ハイパワーで信頼性の高いエンジンがあれば勝てる可能性は高まります。今シーズンはもうひと伸びで優勝に手が届くところまで来ていると感じる」と語る。
富田のエンジン、そしてPOTENZAとともに駆ける草場選手の活躍にご期待ください。
#77 Team Cusco Racing GR86 草場佑介 | |
予選11位 | 82点(ライン24点、アングル25点、スタイル33点) |
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TOP32 | 平岡 英郎戦 勝利 |
TOP16 | 箕輪 大也戦 勝利 |
Result | 総合結果5位 |