2022年から2023年にかけてのタイムアタックシーズン始まりを告げるイベント“REVSPEED筑波スーパーバトル”。これまでベストタイムを更新し続けてきたPCA! 86は昨年を集大成とし、今年はニューウェポンを含む4台のタイムアタックマシンが投入された。それが2台のGRヤリスとスズキのスイフトスポーツ、そして期待の新型として各方面で話題となっている日産フェアレディZだ。GRヤリスはどちらも昨年の筑波スーパーバトルに参戦しており、同型車2台というメリットを活かして2号車の足回りの優れた部分を1号車にフィードバック。また、それぞれの持ち味をブラッシュアップし、1号車は58秒台、2号車は59秒台半ばをターゲットに据えた。そしてスイフトスポーツとフェアレディZは、いずれも今回がシェイクダウン。それぞれのポテンシャルを見極めつつ改善点を洗い出し、次なるアップデートへと繋げるのが大きな目的だった。タイヤは4台ともに優れたウォームアップ性とグリップ性能に信頼を寄せるPOTENZA RE-12D TYPE Aを選択。PCA!新時代の幕開けを予感させる快走を見せた。
霧に阻まれた1本目のアタック。それでも更なる進化の道筋は見えた。
12月7日に開催されたREVSPEED筑波スーパーバトル2022。あいにく早朝から濃霧が立ち込め、路面もウェット状態となるバッドコンディションから幕を開けた。視界不良により、レーシングスピードでのアタックは困難と判断され、各クラス合計3本が予定されていた走行枠の1本目はオールキャンセル。コースはオープンとなり、どのクラスの参加車両でも自由に走れるフリー走行枠となった。最もタイムアップが期待できた1本目の走行枠がなくなり、多くのマシンはアタックに向けて走行チェックとセットアップの最終確認に終始する展開に。残念ながらPCA!の4台のタイムアタックマシンたちも待機を余儀なくされた。
徐々に天気が回復し、視界も良好となってきたことで、2本目以降のスケジュールを当初の10分前倒しでスタートされることがアナウンスされると、いよいよ各マシンとドライバーはアタックモードへと突入。走行の順番が最も早かったGRヤリスの1号車、PCA GR YARIS 1は未だコース状況が悪いと判断し、最後の3本目に賭けることになった。そのため、この日の初陣を切ることとなったのがGRヤリスの2号車であるPCA GR YARIS 2。ドライバーは1号車と同じ佐々木雅弘選手。
すでに気温も路面温度も上がり、ベストタイムの更新は極めて困難な状況だったが、温まりが早く、すぐにアタックが可能となるPOTENZA RE-12D TYPE Aを武器に果敢に攻め込むPCA GR YARIS 2。ステアリングヒーターすらもついたままとなっている快適ストリート仕様にも関わらず、絶妙なサスペンションセッティングがPOTENZA RE-12D TYPE Aのグリップ力をバランスよく引き出し、1本目に1分01秒284、2本目に1分01秒055の好タイムを記録!!
次に登場したのは井口卓人選手がドライブするPCA Swiftsport。まだ走行距離が1800kmというおろしたてのZC33Sに、サスペンション、ブレーキパッド、吸排気系、ECUの制御変更といったライトチューンを施したマシンだ。こちらも足の動きのよさとPOTENZA RE-12D TYPE Aのグリップを武器に、優れた回頭性能を発揮。シェイクダウンにも関わらず、1本目の1分06秒124から2本目には1分05秒701とタイムを更新した。今回の走行で得ることができたデータと井口選手の走行後のコメントをもとに対策が進めば、更なるタイムアップが期待できる。
PCA!の中では3番目の登場となったのが新型フェアレディZのPCA Fairlady Z。ドライバーは長年PCA! 86でタイム更新を担ってきた蒲生尚弥選手だ。こちらもスイフトスポーツと同様、慣らしが終わったばかりの新車をベースにライトチューン。V6ツインターボはノーマルでも405psの最高出力を誇るが、そこからさらに150ps以上のパワーアップを実現している。スイフトスポーツに続いてこちらもシェイクダウン!サーキット初走行、蒲生選手も初ドライブながら1本目に1分01秒420をマーク。更なるタイムアップを狙ってサスペンション等セットアップを変更して臨んだ2本目だったがタイム更新はならなかった。新型フェアレディZの潜在能力は充分に確認できたので、今後は今回の情報をもとにセッティングを煮詰めていくのはもちろん、タイムアタックマシンとしてさらなる進化が図られていく予定。2023年の活躍が今から楽しみだ。
そして最後は、1本のみの走行に賭けたPCA GR YARIS 1が満を持して登場。昨年に比べて大きなアップデートが図られたのはサスペンションで、2号車のサスペンションをベースに更にブラッシュアップ!! すると極めて4輪の接地バランスと回頭性がよくなり、もともと59秒フラットだったベストタイムの更新に期待がかかっていた。残念ながらすっかり日も上がった最後の走行枠ではタイム更新は望むべくもない状況だったが、走り自体は期待通りの進化を印象づけた。POTENZA RE-12D TYPE Aを履いてコースインするや2周目にアタックを開始し、1分00秒002と好タイムを記録。この日のクラストップタイムとなり、コンディションさえ整えば目標の58秒台も夢ではないことを実感させてくれた。
- ストリートRRクラス 4WD部門
PCA GR YARIS 1
タイヤ:POTENZA RE-12D TYPE A 265/35R18 - Best Lap
1'00'002
- ストリートRRクラス 4WD部門
PCA GR YARIS 2
タイヤ:POTENZA RE-12D TYPE A 265/35R18 - Best Lap
1'01'055
- ストリート LIGHT RRクラス FR1部門
PCA Fairlady Z
タイヤ:POTENZA RE-12D TYPE A 285/35R19 - Best Lap
1'01.420
- ストリートRRクラス FF3部門
PCA SwiftSport
タイヤ:POTENZA RE-12D TYPE A
F:225/45R17 R:215/45R17 - Best Lap
1'05.701
佐々木雅弘選手
今日のような1周のタイムを競うタイムアタックでは、期待通りPOTENZA RE-12D TYPE Aのよさが光ったと思います。コンディションはたしかに悪かったんですが、POTENZA RE-12D TYPE Aのウォームアップ性のよさもあって、指標となるタイムを残すことができました。多少濡れた路面でもしっかりとグリップを発揮して、扱いやすいハンドリングを実現してくれるのはさすがだと思います。2台のGRヤリスは、1号車がコンマ1秒でも速く走ることを追求した究極のタイムアタック仕様、2号車がよりライトなストリート仕様という位置づけです。ですが、速くするポイントは共通していて、4WDの特性を活かし、いかに4本のタイヤをしっかりと接地させるか。今回はサスペンションの動きが2台ともよく、トータルバランスにも優れていましたので、コンディションさえよければタイムを更新できていたと思います。じつは1号車は今までのPCA!車両の中でも最大規模と言えるようなアップデートを予定していますので、ぜひ来年以降の展開も楽しみにしてほしいですね。
蒲生尚弥選手
Zのファンにとってはもちろん、多くのスポーツカー好きにも待望の存在といえる新型のフェアレディZですから、僕自身もドライブすることを楽しみにしていました。V6ツインターボは予想以上に高回転の伸びがいいですし、バックストレートではメーター読みで190km/hまで出ていました。86のような軽快感は望めませんが、しっかり手を入れてあげればハイパワーFRを操る楽しさを満喫できるはず。街乗りの快適さをある程度残しつつ、サーキットの走りも両立するベースとして本当に楽しめる存在だと実感しました。POTENZA RE-12D TYPE Aは285/35R19サイズでアタックに臨み、1周目から温まってすぐにグリップが立ち上がる特性をいかんなく発揮することができました。1本目を終えて少し荷重のかかり方に気になる部分があっあので、2本目は少し車高を上げてみたんですが、逆にロールバランスが悪化してしまいタイムを更新できませんでした。今後はその経験をもとにバネレートなどのセットアップを煮詰め、ブレーキも必要に応じて強化するなど、さらにアップデートしていきたいですね。どんどん速くなっていくZの姿をお見せしていきますので、ご期待ください!
井口卓人選手
軽量ホットハッチとして手軽な価格で手に入るスイフトスポーツは、モータースポーツを楽しまれるみなさんにもってこいなモデルだと思います。PCA!ではタイムアタックを通じてスイフトスポーツの走る楽しさはもちろん、POTENZAを装着したり、チューニングを変更していくことで、タイムや走りがどう変化していくのかをわかりやすく伝えていけたらいいですね。今回がシェイクダウンでしたが、POTENZA RE-12D TYPE Aとの相性のよさや、サスペンションの安定感はしっかり実感することができました。特にコーナリングフィールがよく、やったらやっただけ結果に反映される、いじり甲斐のあるクルマだなと感じました。もし一発のタイムを求めるならPOTENZA RE-12D TYPE Aがベストですが、練習を重ねながらスポーツ走行を継続的に楽しみたい人にはPOTENZA RE-71RSもおすすめですね。今回筑波を走ってみて、ECUの制御とブレーキ、それからパワステに改善点を見つけることができました。それらをしっかりと煮詰めていって、さらなるタイムアップを目指していきたいと思います。
藤岡和広氏
PCA!の新たなチャレンジとして、スイフトスポーツとフェアレディZを投入することができた意義は大きいと感じています。駆動方式や価格帯などクルマとしての素性はそれぞれですが、どんなベース車両でも本来のパッケージを活かしつつ、POTENZAを武器にすれば速くなる。それを証明することがPCA!のミッションでもありますから。今回は両車ともまだタイムを本気で追求するというよりは、それぞれの伸び代を計ることが大きな目的でした。両車とも改善点ははっきりしましたので、そこは改良を施しつつ、さらに進化させていきたいと考えています。GRヤリスは昨年の筑波スーパーバトルも走行し、POTENZA CIRCUIT MEETING!(PCM!)でも活躍した1号車に加えて、よりストリートに軸足を置いた2号車も開発しました。あいにくコンディションに恵まれず、タイム更新はなりませんでしたが、同じベース車両でも方向性の違いを楽しめること、逆にタイヤのグリップをうまく引き出すさえできれば、どんな方向性であれちゃんとタイムが出せることを、2台のGRヤリスで証明していきたいですね。2023年のPCA!の活動も、ぜひ楽しみにしてください。
素晴らしいパフォーマンスを発揮したPOTENZA装着車両
サーキットイベントでもその優れたパフォーマンスでマシンの走りをしっかりとサポートする“POTENZA”のハイグリップラジアル。REV SPEED 筑波スーパーバトル2022には、PCA!の各マシンのほかにもたくさんのPOTENZA装着車両が参加しタイムアタックに挑んだ。ここではその中からPOTENZA RE-71RS、そしてサーキットアタックで優れた性能を発揮する POTENZA RE-12D TYPE Aを装着した6台のマシンをピックアップし、POTENZAユーザーのコメントも紹介する。
- CUSCO ストリートクラス RRタイヤ 4WD部門
TOYOTA GR COROLLA
タイヤ:POTENZA RE-12D TYPE A 265/35R18 - Best Lap
1'02.266
4WDレイアウトを活かす足回りと
バランスの良い仕上げで1秒台を狙う
モリゾウエディションをベースに、クスコが早くもGRカローラをカスタム。車両の持つバランスの良さを引き出すセットアップを施しつつ、タイムアタックに対応する仕様へと進化させた。クスコらしく、幅広いカスタマーが同じ仕様で走りを楽しめるよう市販パーツで構成されている。サスペンションはSPORT TN_Rをベースに、サーキット走行用にバネレートを高めにセッティングした。シェイクダウンが筑波スーパーバトルのテスト走行で、本格的なタイムアタックは初めて。「1分1秒台が出せれば……」とクスコの市販開発を担当する恵美さん。装着したPOTENZA RE-12D TYPE Aについては、「コントロール性に優れ素直なタイヤという印象。セッティングについては4WDなので、前後のタイヤの温まり方を合わせることが重要になりそうです」と分析する。また今回は、4輪のグリップ限界のバランスを取りやすいように、アライメントはノーマルに近い仕様にした。ステアリングを握った佐々木雅弘選手は、装着ホイールについてコメント。ホイールの剛性の高さはタイヤのグリップを活かすために重要だという。高速走行時においてホイールのたわみが少ないほど、タイヤをしっかり接地させられるからだ。装着するPOTENZA RW007の剛性はタイムに大きく影響するほど高いと教えてくれた。一方、恵美さんは走行後に、「今日は気温が高くタイムは伸びなかったのですが、クルマのバランスはとても良い。気温が低ければ、間違いなく目標はクリアしていました」とのこと。今後もテストを続け、部品開発に活かしていく。
- ings ストリートEVOクラス RRタイヤ 4WD部門
TOYOTA SUPRA
タイヤ:POTENZA RE-12D TYPE A 285/35R19 - Best Lap
58.783
安定したコントロール性と
NEWエアロでタイム更新
ingsの新たなフルエアロ、N-SPEC Rを装着してブラッシュアップ。スーパー耐久シリーズへの参戦で培った技術を投入して、トレーシースポーツとの共同開発により、空力性能を高めながら見た目の美しさも追求した。それ以外は足回りや排気系のチューンのみで、一般のユーザーが真似しやすい仕様だという。山野代表はPOTENZA RE-12D TYPE Aについて「冷えているときも温まってからも安定して走れる。コントロールがしやすいタイヤですね」と評価。今年はよりトラクションがかかりやすいセッティングで臨んだそうで、なんと昨年の58.950を上回るタイムをマークした。
- Revolution ストリートEVOクラス RRタイヤ 4WD部門
TOYOTA GR YARIS
タイヤ:POTENZA RE-12D TYPE A 265/35R18 - Best Lap
1'00.286
日本一速いヤリスを目指して
セッティングをさらに煮詰める
吸排気チューンやコンピューターセッティング、軽量化を施したサーキット仕様。ノーマルでも完成度の高さが光るスポーツモデルなので、そのバランスを崩さないことに配慮したという。工場長の高木さんに伺ったところ「POTENZA RE-12D TYPE A は、タイムを出すならこのタイヤという印象ですね。一発のタイムがしっかり出せるのに、連続周回も楽しめる。内圧さえ決めればタイムが出るという信頼感があります。サーキットを楽しみたいお客様にも何年も評価され続けています」とのこと。今回はエンジンが本調子ではなく、思ったようなトライができなかったが、日本一速いヤリスを目指してさらにセットアップを突き詰めるという。
- Revolution トリートEVOクラス RRタイヤ FR部門
TOYOTA GR86
タイヤ:POTENZA RE-12D TYPE A 265/35R18 - Best Lap
1'00.034
タイムアタック仕様のタイヤは
やはり“RE-12D TYPE A”
高ダウンフォースの獲得と、200kg以上の軽量化を行った、走るためのチューンを与えたGR86。タイムを追求するために、レーシングカー寄りのセッティングを行っている。「このセッティングに合うタイヤはPOTENZA RE-12D TYPE A しかない」と、工場長の高木さん。「ハイチューンもしっかり受け止めてくれます」。57秒台を目指したかったが、あいにくの高気温で目標は叶わず。ドライバーの佐々木雅弘選手は「タイムアタックの分野ではずっとトップを争っているショップです。全体のセットアップバランスがしっかりマッチすれば、さらなる上を目指せます」と自信を持って話してくれた。
- アールズ ストリートSUPER LIGHTクラス SRタイヤ FF3部門
SUZUKI SWIFT SPORT
タイヤ:POTENZA RE-71RS 215/45R17 - Best Lap
1'05.778
RE-71RSの性能を活かし
ドライバーが操る楽しさを実感
気持ちよくコーナーを攻め込めることができて、サーキット走行を楽しめるスイフトスポーツ。松野代表は、装着したPOTENZA RE-71RSについて、「ロングライフで、しかも減ってからもよくグリップすると感じます。また、サイドウォールの剛性が高いので、サスペンションを硬くしすぎずに済みますね。サーキットを自走で往復しても苦痛はないですよ」と言う。「乗り心地を保ちながら、足が動くセッティングを作れるので、街乗りと両立したい方にもおすすめです」。足を動かしてタイヤの性能を活かすことで、サーキット走行では荷重をよりかけやすくなり、ドライバーがコントロールしやすくなるそう。「操っている感をより感じられます」とのこと。
- NOVEL(REVEL) ストリートSUPER LIGHTクラスFR2部門
TOYOTA GR86
タイヤ:POTENZA RE-71RS 265/35R18 - Best Lap
1'03.371
誰もがさまざまなシーンで
ストレスなく走れる仕様で挑戦
オリジナルサスペンションの装着で、街乗りからサーキットまでストレスなく楽しめる仕様。テストを繰り返してセッティングを煮詰めたという。「モータースポーツを楽しまれる一般の方の車両に近いクラスへの参戦で、どこまでいけるかを試したかった」とメカニックの水谷さん。タイヤのセレクトもその一環で、POTENZA RE-71RSについて「ドライもウェットもバランス良く使えるタイヤです。空気圧のセッティングでどのサーキットにも対応できる懐の広さがある」と話してくれた。またRE-71RSの縦グリップを活かすために、バネレートを高くセット。「どんなにタイヤに荷重をかけてもその分グリップして応えてくれると感じます」と高く評価した。