• POTENZA RE-71RS IMPRESSION

Vol.01 POTENZA RE-71RS X 山野哲也

未知のオン・ザ・レール感に昂ぶる

Vol.01 未知のオン・ザ・レール感に昂ぶる

開発に携わったテストドライバーのひとりである山野哲也氏が、筑波サーキット コース2000でPOTENZA RE-71RSのパフォーマンスをじっくりと確かめた。優れたドライグリップ性能が、これまでに経験したことのないようなオン・ザ・レール感をもたらすことに改めて心を動かされたという。

TEXT:後藤比東至 PHOTO:田中秀宣

POTENZA RE-71RSを、レーシングドライバー山野哲也氏が体感!

最速への徹底したこだわりが、リアル・スポーツPOTENZAをさらに進化させる原動力となった

POTENZA RE-71RSの開発コンセプトは明快だ。さらなるドライ性能の向上である。2015年、POTENZAストリートラジアル史上最速を目指し、優れたグリップを実現して大きな注目を浴びたのがRE-71Rだが、その系譜を受け継ぎ、POTENZA RE-71RSは最速へのあくなき追及から生まれた。一般路で求められる性能を高めることはもちろん、特にサーキット走行におけるドライグリップの向上にフォーカスし、パタン、形状、材料、構造、これらすべてを一新することで、RE-71Rとは別次元のグリップ力を達成している。

テストドライバーとして開発に深く関わった山野哲也氏は、RE-71RSを装着し、走り出せば、すぐに違いを体感できるはずだという。しかし、RE-71Rがとてもレベルの高いストリートラジアルタイヤだったことは、POTENZAファンならよくご存じの通り。それを超えるタイヤを生み出すことができるのだろうか…… 当初はそんな思いが山野氏の胸中にはあった。いままでの限界を、さらに超えていく。RE-71Rの開発にも携わっていたからこそ、そこに困難さを感じていた。

大きな壁を乗り越えるために開発陣が選んだ道は、モータースポーツで培ってきた先進技術を惜しみなく注ぎ込むことだった。なかでもストリートラジアルという枠組みにおいて進化のお手本となったのが、レーシングフィールドで鍛え上げられたPOTENZA RE-12DやRE-07Dが搭載した技術だった。RE-12DとRE-07DはTOYOTA GR86/BRZ RACEで活躍。またRE-12Dのレボリューション版であるRE-12D TYPE Aは、山野氏が全日本ジムカーナ選手権通算100勝を達成し、さらに自身の日本記録を更新する19回目のシリーズチャンピオン獲得の原動力になっている。

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非対称パタンと非対称トレッドプロファイルの採用で、優れたグリップと耐摩耗性能を両立した

POTENZA RE-71RSにRE-07DやRE-12D譲りの技術が投入されていることは、そのトレッドパタンにはっきりと表れている。RE-71Rは左右対称のパタンだったが、RE-71RSは非対称パタンを採用しているのである。その狙いは、イン側に配置した太い2本の主溝で高い排水性を確保しつつ、アウト側のトレッドのブロック剛性を上げることで、コーナリング時に高いグリップを引き出すことだ。このほかにも、溝を低角度に配置し横方向に対しての剛性を上げるローアングルグルーブや、アウト側ショルダー部のブロック剛性を上げ、コーナリング限界走行性を高めるスリックショルダーブロックが“最速”に貢献している。

山野氏は、サーキット走行で最もタイヤ性能の違いが出るのはコーナリング性能だと説明する。コーナリング中は外輪に大きな負荷がかかるが、そのなかでも接地面内のアウト側に接地圧が集中し、イン側は接地が薄くなりやすい。タイヤが効果的にコーナリングフォースを発生するためには、コーナリング中に接地面全体が均一に接地することが重要だ。これを実現するためのカギとなった技術が非対称トレッドプロファイルである。タイヤの断面形状は、アウト側がなだらかにラウンドしているのに対し、イン側はショルダーへかけてきついアールでラウンドしている。そうすることでコーナリング中の接地性を高めているのである。

また、RE-71RSは専用に開発された新コンパウンドを採用。より高いグリップを達成するためにソフトなコンパウンドを使うというのは必須条件だったが、RE-71RSはこのソフトなコンパウンドのゴムを使いこなし、きれいにタイヤを使い切ることで、グリップと耐摩耗性能を高いレベルで両立した。これには非対称パタンと非対称トレッドプロファイルが大きく寄与している。また、パタンアウト側の高剛性化によりコーナリング時のブロックのよれを抑制し、加えてコーナリング中の均一な接地がタイヤ接地面内での偏減りを抑制。接地面全体を使い切ることができ、その結果として耐摩耗が向上しているのだ。

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4輪がしっかりと路面に食いついて離さず、体験したことのないようなオン・ザ・レール感を味わう

開発過程で何度も足を運んだ筑波サーキットだが、完成したPOTENZA RE-71RSをポテンザサーキットアタックでも活躍するBRZに装着し、フィーリングを確かめた山野氏は驚きを隠さなかった。RE-71RSには、レーシングタイヤに近い感触を感じたと言う。山野氏はタイヤの性能やフィーリングに触れるとき、コーナリングを8分割して説明する。1/8〜3/8が進入、4/8と5/8の間がクリッピングポイント、そして5/8以降がコーナーを立ち上がってく区間、といった具合だ。その1/8から8/8まで、つまりコーナリング中すべてにおいて、POTENZA RE-71RSは高いグリップ力を発揮するというのである。

それは少ない操舵角(微少舵角)でも、しっかりと曲がり、ステアリングがグッと手応えを増すことからはっきりと気づかされる。さらに特筆すべきは、トラクション性能の向上だ。5/8から先、コーナーを抜け出していくときにアクセルを開けると、パワーを路面に伝える力の強さを感じ取ることができ、クルマをぐいぐいと前へ進める。なおかつ操縦安定性も向上しており、リアタイヤがガッチリと路面を捉える。筑波サーキットのレコードラインにレールが敷かれていて、その上をジェットコースターが凄いスピードで駆け抜けていく…… そんな感覚だった。

こういった4輪が路面に食いついて離さないオン・ザ・レール感はこれまでに味わったことのないものだと、山野氏は感心しきり。だから、ステアリングとペダルの操作に集中することができる。ドライバーは運転中常にステアリングを細かく修正しながら走行するが、その修正が少なくて済むのもいい。さらにハンドリングの素晴らしさも心に残った。強烈なグリップを発揮するまでは、ステアリングから伝わってくるフィールは思いのほかソフトで、路面にしなやかに追従するという印象。しかしステアリングを切って大きなグリップが発生すると、しっかりと路面ととらえ、カチッとした剛性感とオン・ザ・レール感が伝わってくるのである。

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さらなるドライグリップの向上を実現し、まるで運転がうまくなったかのように感じるタイヤ

路面にビタッと張り付くようなオン・ザ・レール感と優れたトラクション性能の実現には、タイヤの骨格構造を進化させたことも大きく貢献している。そう説明するのは、ブリヂストン PSタイヤ開発第3部 PSタイヤ設計第一ユニット 菱ヶ江 明氏だ。RE-71RSの骨格構造は、コーナリング中にしっかりタイヤをたわませて、できるだけ広く、均一に接地するように設計している。その一方、コーナー出口からはたわんだケースの跳ね返りも重要で、それがアクセルを踏み込んだときのトラクションのかかり具合に影響するのだという。ただ剛性アップすればいいのではなく、しなやかさも不可欠だったのだ。

こうした骨格構造を、高いグリップ力を発揮するパタンや形状、コンパウンドとベストマッチさせることでタイヤの総合性能を高めることができるわけだが、そこに開発の難しさがあったという。そして数えきれないテスト走行を経て、膨大なデータやテストドライバーのインプレッションを開発エンジニアが整理し検討した結果、たどり着いた“正解”が、POTENZA RE-71RSなのだ。山野氏は、その難題にチャレンジし続けカタチにしたエンジニアをはじめとする開発に携わったすべての方々に、心から敬意を表したいと言った。そして、優れた性能を実現したRE-71RSは、どのようなレベルのドライバーでも「運転がうまくなったのかな」と思うはずだと話す。

競技用タイヤのグリップ感がありならストリートでも使える、夢のようなタイヤだと菱ヶ江氏。幅広い車種におすすめできるので、普段使いからサーキット走行まで一台でこなす様な方に気に入っていただけるはずと期待している。山野氏は、平日は通勤、週末はサーキットというサンデーレーサーや、タイムアップを狙う上級者の方はもちろんだが、初心者の方にもおすすめしたいと言う。いざという時に技量をカバーしてくれ、安心感を持って乗れるタイヤを使うことが、初心者にとって大切だと思っているからだ。再び“POTENZA史上最速”を極めたRE-71RSは、ストリートでもサーキットでも新しいドライビング体験をもたらしてくれる。「自信をもって送り出せる」、そう山野氏は結んだ。

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