【自動車メディアレポート】ブリヂストンの最新乗用車用スタッドレスタイヤBLIZZAK VRX3

くるまのニュースによる「ブリザック VRX3」のレポートをご紹介します

ライフ性能17%向上
BLIZZAK VRX3【後編】

ブリヂストンの乗用車用最新スタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX3(ブリザック ヴイアールエックススリー)が、9月1日から順次発売されました。従来品であるブリザックVRX2の全方位型の大きな性能円はそのままに、氷上でのブレーキ性能を20%向上(※)、さらに摩耗ライフを17%も向上(※)したといいます。相反する性能をどのように向上させたのでしょうか。ブリヂストンの開発担当者に話を聞いてみました。
文=ネギシマコト

氷上ブレーキ性能は20%向上、
さらに摩耗ライフ性能は17%向上!

 日本の冬道での安心・安全のドライブをサポートしているのが、ブリヂストンの乗用車用スタッドレスタイヤ「BLIZZAK(ブリザック)」です。

 ブリザックの歴史は古く、登場は1988年とすでに33年もの歴史を誇っています。北海道や北東北主要5都市での装着率は20年連続ナンバーワン、いまでは一般ドライバー装着率は46.2%。そしてタクシーの装着率は北海道・札幌市で69.5%という、いわばスタッドレスタイヤの代名詞です。

ブリヂストンの最新乗用車用スタッドレスタイヤBLIZZAK VRX3

■アウディ「A4セダン」に装着したブリヂストンの乗用車用新スタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX3」の走行シーン

 そんなブリザックですが、最新モデル「BLIZZAK VRX3(ブリザック ヴイアールエックススリー)」が登場しました。2021年9月1日より順次発売されています。

 BLIZZAK VRX3最大の特徴は、スノー性能やドライ性能、転がり抵抗性能など、スタッドレスタイヤに求められるさまざまな性能は高いままに、氷上ブレーキ性能を従来品対比で20%向上(※)したことです。

 ブリザックは、これまで新製品が登場するたびに氷上性能がおよそ10%ずつ進化してきた歴史がありますが、VRX3では20%向上と、2世代分進化したことになります。

 VRX2の発売から4年。つまり、8年分も進化して登場したのが新製品のVRX3です。

 BLIZZAK VRX3の性能向上はそれだけでなく、摩耗ライフが従来品と比べて17%向上(※)したことです。氷上ブレーキ性能と摩耗ライフ性能という、背反する性能をどのように向上させたのでしょうか。ブリヂストンの開発担当者に話を聞いてみました。

ブリヂストンの最新乗用車用スタッドレスタイヤBLIZZAK VRX3

■ブリヂストンの新乗用車用スタッドレスタイヤ、BLIZZAK VRX3の開発を担当した3名。左から渡部亮一さん、佐藤奈那子さん、井久田明史さん

 前回は新採用の「新気泡形状フレキシブル発泡ゴム」について話を聞きました。その効果を考えると、ゴムをもっと柔らかくして、中に気泡をたくさん入れれば、よりアイスバーンに強いタイヤになるかなと思うのですが、いかがでしょう。

「一般論でいえばそのとおりです。しかし、ゴムが柔らかすぎると、ドライ路面での摩耗が早くなるというデメリットが生まれます。これはブリザックの『全方位での性能向上』というポリシーとは相容れないものです」(渡部さん)

 つまり一般的には「氷上性能」と「耐摩耗性」は背反するものなのですね。

「はい。この背反性能をどう両立させるかということは、ブリヂストンのタイヤ開発において大きなキーワードになっています」(渡部さん)

 では、BLIZZAK VRX3が氷上ブレーキ性能を20%向上(※)させつつ、従来モデルに対し17%(※)もライフ向上を実現した秘密は、どこにあるのでしょうか。

「BLIZZAK VRX3では、新たなトレッドパタンを採用し、接地の最適化を図ることで、氷上性能と耐摩耗性の両方を向上させています」(佐藤さん)

  • ブリヂストンの最新乗用車用スタッドレスタイヤBLIZZAK VRX3

    ■株式会社ブリヂストン製品企画部門PSタイヤ製品企画第1課の渡部亮一さん。BLIZZAK VRX3全体をまとめた

  • ブリヂストンの最新乗用車用スタッドレスタイヤBLIZZAK VRX3

    ■株式会社ブリヂストン タイヤ開発第3部門 PSタイヤモジュール設計第2部の佐藤奈那子さん。トレッドパタンも含めたタイヤ全体の設計を担当

 それは、具体的にはどのような技術なのでしょうか。

「路面と接するタイヤのトレッド面は、走行中に局所的な“滑り”が発生しています。この滑りが、タイヤを摩耗させる大きな原因です。BLIZZAK VRX3では、トレッド中央部に均等な幅、同じ形状のブロックを配置する『均一ブロック』と、ブロックの位置ごとにサイプの密度と方向を最適化した『最適サイピング』を取り入れ、トレッド変形と接地圧を最適化し、路面に理想的な形で密着する『新トレッドパタン』を採用しました。

 さらにタイヤの接地がより最適となるよう、トレッドの幅を含めたタイヤの形状そのものも、サマータイヤとは異なるものとしています。これら技術の導入により、氷上では路面の水をすばやく溝に流すことで接地部分への回り込みを抑制し、タイヤの接地性を高める一方、ドライ路面では適切な接地圧、接地面形状が滑りを低減して摩耗を抑え、ロングライフを実現するという、相反する性能が両立できました」(佐藤さん)

摩耗ライフだけでなく、効き持ちも向上している

 スタッドレスタイヤのライフ性能というのは、摩耗だけではありません。たとえ摩耗を抑えることができても、2年目、3年目でゴムそのものが硬くなってしまうと、それは性能の低下につながると思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

「従来品のBLIZZAK VRX2では、ゴムの柔らかさを維持するためにオイルなどを配合していました。しかしご指摘のように、時間とともこのオイルが抜けてしまうことでゴムが硬化し、氷上性能が低下してしまいます。BLIZZAK VRX3のフレキシブル発泡ゴムでは、オイルに加え、ゴム部分に分子量が多く、オイルよりも抜けにくい『ロングステイブルポリマー』を配合することで、これまで以上に柔らかさが持続します。社内でおこなったシミュレーションでは、BLIZZAK VRX3の氷上摩擦係数は、約4年使った時点でも、先代のBLIZZAK VRX2の新品時を上回ると想定しています」(井久田さん)

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    ■株式会社ブリヂストン 次世代技術開発統括部門 次世代配合開発第2部の井久田明史さん。おもにトレッドゴムの開発を担当

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    ■ブリヂストンの乗用車用新スタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX3」のトレッドパタン

 トレッドパタンはイン側、アウト側の指定はありますが、回転方向は指定されていません。ドライでも雪道でも、より性能を高めようとするなら、回転方向を指定したパタンのほうが有利だと思うのですが。

「イン/アウトに加え、回転方向も指定したほうが、絶対性能としては有利な面もあります。しかし指定された回転方向に応じ最適化したトレッドパタンとすると、間違って逆に付けてしまった場合の性能低下が著しくなります。スタッドレスタイヤは、お客さまがご自身で交換することもある商品ですし、カー用品店やタイヤ販売店でも、雪の予報で慌ててタイヤ交換しようと訪れたお客さまで夜中まで仕事に追われることがあります。そうした状況での付け間違いの可能性を低くするため、あえて回転方向は指定していません」(渡部さん)

 ブリヂストンの発泡ゴムは、よくスポンジに例えられます。一般的なイメージですが、スポンジは摩耗しやすいという感じがありますが、BLIZZAK VRX3の「アイス路面でよく止まるけど摩耗もしない」というのはどうなんですか。

「おっしゃるとおりで、発泡ゴムの例えとしてはスポンジがいちばんイメージしやすいのですが、空気が入っているから減りやすいというのは、残念なイメージを植え付けられてしまったなと。それは当社としてももうちょっとうまく伝えられればよかったと思うところです。昔からじつはブリザックのライフ性能は悪くはなかったのですが、そういうイメージが付いてしまいました。従来品のBLIZZAK VRX2も耐摩耗性は頑張って向上させたのですが、今回BLIZZAK VRX3は、そこもさらに向上させました」(渡部さん)

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    ■ブリヂストンのスタッドレスタイヤを支える独自技術が「発泡ゴム」だ

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    ■BLIZZAK VRX3はトレッド変形と接地圧の最適化で摩耗ライフを17%向上

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    ■新素材のロングステイブルポリマーが発泡ゴムのやわらかさを持続する

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    ■アイス性能と摩耗ライフが向上したが全方位型の大きな性能円は変わらない

 タイヤは「バランスの商品」といわれます。つまり、どこかの性能を落とせば、アイス性能だけに特化させたものや、ライフ性能を大幅に向上させたスタッドレスタイヤなどもつくることは可能です。

 ですがBLIZZAK VRX3のリリースを見ると、氷上ブレーキ性能20%向上(※)、摩耗ライフ17%(※)向上だけでなく、スノー性能やドライ/ウエット性能、そして静粛性、転がり抵抗など、あらゆる性能が高い水準で保たれています。。

「これはブリヂストンのタイヤ開発におけるポリシーなのですが、大前提となるのは『全方位の性能向上』です。新製品を開発するにあたり、さまざまな要望が出てきます。そうした要望に対し『今回はここには目をつぶってこっちを伸ばせばいい』というスタンスであれば、じつは簡単です。アイスに効く、摩耗に効くといった技術を持ってきて、従来品と組み合わせればいいからです。

 しかし私たちはそうした妥協はせず、ドライやウエット性能、静粛性など、タイヤに求められるすべての性能を伸ばすという姿勢で開発に取り組んでいます」(渡部さん)

ブリヂストンの最新乗用車用スタッドレスタイヤBLIZZAK VRX3

■一言で冬道といっても圧雪路面からアイス路面、シャーベット路面、ドライ・ウエット路面などさまざまな路面が存在する

 タイヤは多くの人が関わり、そして多くの人の思いが込められている商品だということを、今回のBLIZZAK VRX3の開発者に話を聞いてあらためて実感しました。3名の開発者に、あらためてタイヤづくりの面白さを聞いてみました。

「ゴムって不思議な物質で、毎日ゴムに向き合っている私たちでも、わからないことが多くあります。でもそれが良いところだと思います。わかりきったことをやるのは、教科書で勉強するのと同じじゃないですか。でもゴムは、わからないから自分で手を動かし、工夫し、実験して、その本質に近づき、解き明かしていく。開発にはそういう面白さがあります。そして、時代が求める“タイヤの最適解”は、環境によっても変わっていく。いまできるベストをいつも追いかける努力には、終わりがありません」(井久田さん)

「その“最適解”も、けっしてひとつじゃないんです。たとえば『全方位の性能向上』を目指すなかでも、アイスバーンでの性能を重視するのか、全体をまんべんなく上げていくのか、そうしたコンセプトに応じて、解はいっぱい出てくるんです。そしてどんなゴムを使うかによっても、トレッドパタンの最適解は変わってきます」(佐藤さん)

「トレッドパタンを考えるチーム、ゴムを考えるチーム、さらには材料や製法を考えるチームがしっかりコミュニケーションしなければ、いい製品は生まれません」(渡部さん)

※ ※ ※

 タイヤは日々進化していきます。ブリザックが登場した33年前には、現在のBLIZZAK VRX3のような性能は、夢のまた夢だったと思われます。

 ですがその性能向上は、それまで開発に関わったすべての人の汗と努力の積み重ねがあってこそのもの。その積み重ねこそ、ブリザックがスタッドレスタイヤの代名詞といわれるような信頼を得てきた証拠でもあります。

 33年前には夢だった性能を現在実現しているということは、今後もスタッドレスタイヤは進化を続けていくということでもあります。最後に、今後“理想のスタッドレスタイヤ”がどのようなものになるのか、聞いてみました。

ブリヂストンの最新乗用車用スタッドレスタイヤBLIZZAK VRX3

■ブリヂストンの新乗用車用スタッドレスタイヤ、BLIZZAK VRX3の開発を担当した3名。左から井久田明史さん、佐藤奈那子さん、渡部亮一さん

「イメージとしては、サマータイヤでドライ路面を走行するときと同じくらいストレスなく自在に氷雪路面を走行できる、より安全性の高いタイヤですね」(佐藤さん)

「やはり氷上性能と耐摩耗性の双方を上げていくことだと思います。そして、年間とは言わないまでも、秋の終わりに装着し、春遅くまで使えるようにしたら、雪の時期に慌てなくてもいいし、より安全になると思います」(井久田さん)

「究極は、雪道でも凍結路でもサマータイヤがアスファルトを走るときのようにグリップが出せるタイヤでしょうね。そんなオールマイティなスタッドレスタイヤの実現を目指し、さらに研究開発を進めていきたいと思います」(渡部さん)

(文中の※)試験条件の 詳細はこちらをご覧ください

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